ラテン語の動詞は複雑に変化します。動詞の変化はconjugationといいますが日本語で近い言葉は「活用」なのでこの用語を使います。
活用の概要
動詞は何によって活用するのかをまとめます。
人称 person
その動詞の主語が誰であるかを表します。英語と同じく6つあります。
人称 | 日本語の主語 | 英語の主語 |
---|---|---|
一人称単数 | 私 | I |
二人称単数 | 君、あなた | thou, you |
三人称単数 | 彼、彼女、それ | he, she, it |
一人称複数 | 私たち | we |
二人称複数 | 君たち、あなたたち | you |
三人称複数 | 彼ら、彼女たち、それら | they |
二人称単数はフランス語のような親称と敬称の区別はありません。英語の場合は二人称単数は古い形のthouが本来対応しますが通常はyouで訳されます。
時制 tense
その動詞が影響をあたえる時間を表します。どのような種類があるかは以下で説明する法にも関係します。
頻度の高い直説法では6つあります。
時制 | 意味 | ラテン語の呼称 | 英語の呼称 |
---|---|---|---|
現在 | 現在継続している動作 | praesens | present |
不完了 | 過去に継続していた動作 | praeteritum imperfectum | imperfect |
未来 | 未来に起こる動作 | futurus | future |
完了 | 現在完了している動作 | praeteritum perfectum | perfect |
過去完了 | 過去に完了した動作 | plus quam perfectum | pluperfect |
未来完了 | 未来に完了する見込みの動作 | anterior futurus | future perfect |
法 mood
法には人称に影響するものとしないものがあります。
直説法と接続法、命令法は人称によって活用がことなります。一方不定法や分詞やその他の用法(ジェロンディフ gerundive、スピーヌムsupine)では人称に影響は受けません。
態 voice
能動態と受動態で活用が変わります。
語幹 radical
一つの動詞に対して語幹は3つあります。動詞の活用によってどの語幹が使われるか決まります。このそれぞれは一律に対応するわけではないので動詞一つに対しこの3つを覚えておく必要があります。
語幹 | ラテン語の呼称 | 活用の種類 |
---|---|---|
現在語幹 | infectum | 現在、不完全過去、未来 |
完了語幹 | perfectum | 完了、過去完了、未来完了 |
スピーヌム | supinum | 受動完了分詞、能動未来完了分詞 |
辞書での動詞の見出しは一人称単数直説法現在能動態、現在能動不定詞、一人称単数直説法完了能動態、スピーヌムの四つが記述されています。この四つがわかれば他の活用が導き出されるためです。
5つの活用形
動詞によって活用の仕方が異なります。基本的に現在語幹によって分類されます。
第一活用形
現在語幹のが-aで終わっているものです。完了語幹は一律-āvがつきます。現在語幹と完了語幹、スピーヌムが一律に対応するのはこの第一活用形のみです。
amō, amāre, amāvī, amātum 愛する
第二活用形
現在語幹が-eで終わっているものです。現在能動不定詞は-ēreと長母音ēが使われます。後の第三活用形の場合は短母音なので区別する必要があります。
dēleō, dēlēre, dēlēvī, dēlētum 壊す
第三活用形A
現在語幹が子音で終わるものです。ただし活用によっては短母音の-iや-eが挟まれます。
legō, legere, lēgī, lēctum 読む
第三活用形B
現在語幹が活用によっては短母音の-iや-eで終わるものです。上記A型のバリエーションと考えられていて多くの場所で共通な活用をします。
capiō, capere, cēpī, captum 取る
第四活用形
現在語幹が-iで終わるものです。このiは活用によって長母音と短母音のどちらかに変化します。
audiō, audīre, audīvī, audītum 聴く