ラテン語:直説法の時制

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ラテン語の動詞には英語と同様に時制があります。時制によって語られた内容の時間的な位置関係がわかるようになります。ラテン語の時制は直説法、接続法、不定法、命令法に存在しますが一番数の多いのは直説法です。接続法は従属文に多く使われるため直説法の時制の影響を受けます。ここでは直説法の時制を見ることにします。

直説法での時制の種類

個別の時制を見る前に大きな概要を説明します。まず時間的な位置として

  • 現在時制
  • 過去時制
  • 未来時制

の3つがあります。現在時制は今発生している出来事、過去に発生したことが確認されている出来事、これから発生すると予想されている出来事を指します。

これとは別に相とかアスペクトとか言われる考え方があります。その時間に対する動作の関わり方という概念です。以下の二つになります。

  • 現在相
  • 完了相

ラテン語の文法では「現在」という言葉が時間的な位置で使っている「現在」と重複しているため注意が必要です。現在相は進行していること、繰り返されていることを指し、完了相は動作が完結していること、一度きり行われることを指します。相は本来時制とは違う扱いをするものなのですが多くの言語では時制の中に組み込まれています。このため相を含まない狭い意味の時制と相を含む広い意味での時制という考え方をします。

この3つの狭い意味の時制と2つの相を掛け合わせた6種類がラテン語の時制とされます。

現在相 完了相
現在時制 現在 present 完了 perfect
過去時制 不完了 imperfect 過去完了 pluperfect
未来時制 未来 future 未来完了 future perfect

相による語幹の違い

上の表のうち左の列、現在相に属する現在と過去、未来は現在語幹といわれるものから作られます。右側の完了相に属する完了と過去完了、未来完了は完了語幹から作られます。

辞書には一人称単数能動態直説法で現在「私は〜する」と現在完了「私は〜した」という変化が見出しに出ています。「私は愛する」を例に見ます。

amōo:私は愛する、愛している

amāvī:私は愛した

現在語幹は現在の時制を作るのに使います。ama-で一人称単数の変化語尾-ōが付いた結果amaōが縮まりamōとなっています。三人称単数の変化語尾-tをこの語幹につけるとamat「彼(彼女)は愛する」になります。

完了語幹はamāv-で一人称単数の変化語尾-īがつくとamāvī「私は愛した」という形になります。ラテン語の子音vはヴァ行ではなくワ行なのでアマーウィーという発音をします。三人称単数の語尾-itをつけるとamāvit「彼(彼女)は愛した」となります。

時制の説明

この6つの時制について簡単に説明します。

現在

現在起こっている出来事を表現します。英語の現在形と現在進行形に相当します。語尾は能動態では次のようになります。単数は人称順に-ō、-s、-t、複数は-mus、-tis、-(u)ntが語幹に付きます。

不完了

不完了は「〜していた」という意味で現在を考慮しない過去の進行や繰り返しを意味します。英語では過去形、フランス語では半過去に相当します。ここでの出来事が現在どうなっているかは考慮されません。語尾は不完了を表す-ba-を挟み-m、-s、-t、-mus、-tis、-ntが付きます。

未来

現在より後に起こりうる出来事を表します。未来はこれから起こること「〜するだろう」「〜する予定である」ことを表しますが未だ発生していない出来事を扱うため非現実な事柄を扱う接続法との境界が曖昧です。変化によっては見分けのつかないものがあります。未来を表すために語幹に語尾が付いたり母音が変化したりしますが語尾は-o/m、-s、-t、-mus、-tis、-(u)ntが付きます。

現在完了

現在、動作が完結している出来事を表します。不完了は過去のことを述べているだけですが現在完了は過去の出来事であっても現在の状況に注目している点が異なります。完了語幹に-ī、-isti、-it、-imus、-istis、-eruntが付きます。

過去完了

過去の時点で動作が完了している出来事を表します。文脈のなかで既にある過去についての話題があることが前提となります。完了語幹に過去完了を表す-era-を挟み-m、-s、-t、-mus、-tis、-ntが付きます。

未来完了

未来の時点で動作が完了している見込みの出来事を表します。こちらも未来のことについて既に話題に出ていることが前提になります。完了語幹に-ero、-eris、-erit、-erimus、-eritis-erintが付きます。

動詞の変化の種類

一つの時制で3つの人称と2つの数で合計6つの変化をしますが直説法では6つの時制があるため直説法の能動態で6×6の36通りの変化となります。受動態を入れるとさらに2倍になるので72通りとなります。

数の多さに圧倒されそうになりますがほとんどは規則通りの変化なので語幹と語尾の組み合わせを注意深く追って行けば時間とともになれるはずです。なぜかというと言語の規則はそれが有用で便利だから存在するものだからです。フランス語でも一つの動詞の語尾変化だけではなく複数の単語の組み合わせにも使うようになったものの表現上はこの36通りは表現できるようになっています。

最後に6つの時制で一人称単数と三人称単数での変化を一覧しておきます。

一人称単数 三人称単数
現在 amō amat
不完了 amābam amābat
未来 amābō amābit
完了 amāvī amāvit
過去完了 amāveram amāverat
未来完了 amāverō amāverit

動詞は語幹の形により4つまたは5つに分類されます。また不規則動詞も幾つか存在します。

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