古ノルド語のアルファベットについて

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古ノルド語で使われていたルーン文字については以前書きました。10世紀ごろにキリスト教がスカンジナヴィアに浸透してくるとラテン語で使われていたローマ字も広まるようになります。インクとペンを使い文字を書き留める習慣ができて次第にルーン文字からローマ字の使用に移ってきます。ここでは古ノルド語を記述するためのアルファベットについて説明します。

古ノルド語のローマ字表記の資料

エッダやサガと言われる一連の物語群はスカンジナヴィアから1000キロほど海を隔てたアイスランドでローマ字表記で書かれました。アイスランドはノルウェー人の植民地で古西ノルド語を話していました。アイスランドの文書が多いため古ノルド語のローマ字資料は当時のアイスランドの言葉、古アイスランド語、または古西ノルド語に依存しています。

ローマ字を使うにしても古ノルド語の音韻の体型はラテン語とは違うためもとのローマ字に改変が加わっています。当時のスカンジナヴィアの有識者の間でも古ノルド語の正書法は定まらなかったようで、アイスランドで書かれたサガの書法(íslenzk fornrit saga edition)が結果的に正書法の扱いとなっています。

古ノルド語・古アイスランド語のアルファベット一覧

アイスランドの書法では、はじめにþとðが導入されました。大文字でÞ、小文字でþは無声のthを表します。英語のthingのthに近い音です。大文字でÐ、小文字でðは有声のthを表します。こちらは英語のthisのthに近い音です。

またオに近い音はoとóがありますがその他にøとǫという文字がありました。øはオの口の形でエと発音するものでǫは丸い口の形でオと発音するものです。13世紀ごろにはこの二つは一緒になりöと記述されるようになりました。

æとœも同じようにアの口でエ、オの口でエですが長い音になります。これも後に次第に区別がつかなくなりæで統一されることになります。

cとqとwはほとんど使われません。母音は鋭アクセント(´)で長い母音を表現します。

文字 備考
A a 短いア
Á á 丸い口の長いオに近いア
B b
D d
Ð ð 有声のth(ザとダの間)
E e 短いエ
É é 長いエ
F f 語頭はf / 語中語末はv
G g 通常g / sとtの前で無声のch
H h
I i 短いイ
Í í 長いイ
J j ヤ行
K k
L l
M m
N n
O o 短いオ
Ó ó 長いオ
P p 通常p / sとtの前で無声のf
R r 巻き舌のr
S s
T t
U u 短いウ
Ú ú 長いウ
V v wまたはv
X x 無声のch + s
Y y ウの口の短いイ
Ý ý ウの口の長いイ
Z z ts
Þ þ 無声のth(サとタの間)
Æ æ アの口の長いエ
Œ œ オの口の長いエ
Ö ö
Ǫ ǫ
丸い口の短いオに近いア
Ø ø オの口の短いエ

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