ギリシア語のσύνという前置詞は「一緒に」という意味になりますが接頭辞になって英語にもたくさん入り込んできています。syn-,sym-で始まる単語はこの可能性が高いです。
シンクロ synchronize
χρόνος / khronos「時間」が後ろについて-izeという動詞化語尾がさらについたものです。「同じ時間にする」という意味から「同期する」などという言葉になっています。クロノスはギリシア神話の時間の神様の名前でもあります。
システム system
ἵστημι / istemi「立つ」という動詞が後ろについたもので「一緒に成り立つこと」を意味します。あるシステムの下ではある固有の決まりに従って部分部分が矛盾なく動作することを期待されています。
シンフォニー symphony
φωνή /phone 「音」が後ろについたもので「一緒に鳴る音」を意味します。日本語では「交響曲」と訳されていますがこの「交」がsyn-を表していると思われます。pの前ではnはmに変わります。
シンボル symbol
βάλλω / ballo 「私は置く」という動詞が後ろについたものです。「一緒に配置する」ということから「あるものによって別のものを連想することができる関係」「象徴」という意味に使われます。記号にも意味的に近い言葉です。
シンセサイザー synthesizer
θέσις / thesisは「状態」とか「設定」とかを意味するものでsynthesisは(ある別々なものの)「状態を一緒にすること」つまり「合成」の意味になります。なにも音である必要はないのですがいくつかの音信号を合成して新しい別の音をつくりだすのが今でいうシンセサイザーのことになります。thesisはドイツ語経由でテーゼ「命題」という言葉で日本語化されています。
シンパシー sympathy
πάθος / pathosは「痛み」「苦しみ」「憐れみ」などを意味していますがこれに「一緒に」という接頭語が加わると「同情」になります。パトスは「感情」「感性」というような意味に使われますがこれはλόγος / logos「言葉」「論理」に対する概念で使われているようです。pathosは英語の発音でペーソスとも読まれます。この場合は「哀愁」といった意味になっています。
シノニム synonym
ὄνομα / onoma「名前」が後ろにつくと「同意語」「類義語」という意味になります。データベースにつける別名もシノニムと言われます。
シンポジウム symposium
πίνω / pino「飲む」が後ろについています。「一緒に飲むこと」「宴会」の意味です。原題風に言えば「飲み会」です。ギリシア人は夜の宴会のときにいろいろなことを議論したことから「集まって議論をすること」という意味になりました。現代のシンポジウムでは通常はお酒を飲まないので本来のシンポジウムからは逸脱していることになります。
ちなみにプラトンの「饗宴」という有名な著作の原題はσυμπόσιον / sumposionといい、元になっているギリシア語そのままの意味になっています。
英語で使われる他の単語
symptomは病気の「症状」の意味で使われます。πίπτω / pipto「落ちる」という動詞が使われています。「落ちる」は「現象が発生する」という意味にも使われます。
symbiosisは「共生」という意味です。βίος / bios「生命」という言葉が使われています。バイオは日本語になっていますね。