ギリシア語の動詞:概要(2)

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時制の続きです。

第二時制と言われる未完了、アオリスト、過去完了は直説法で動詞の先頭にε-がつきます。例えばλύω「解放する」の未完了はἔλυονです。また母音から始まる動詞はε-が付く代わりにその母音が拡大化し長くなります。ἁνύω「完遂する」の未完了はἥνυον、ὁρίζω「制限する」の未完了はὥριζον です。

完了と過去完了と未来完了は全ての法で畳音 redoublementという現象が見られます。これは最初の子音にεをつけたものが接頭辞のように付く現象で、例えばλύωの完了はλέλυκαとなります。母音で始まる場合は長母音になるため第二時制の変化にでてきた母音の拡大化と見分けがつかなくなります。

過去完了は第二時制のε-と畳音の両方の変化を受けます。例えばλύωの過去完了はἐλελύκεινです。

時制についての注意

時制が時間の表現と一致するのは直説法だけで、それ以外では相またはアスペクト l’aspectと呼ばれる表現になります。

現在時制はその動作が長く続くことを意味しますが、一方でアオリスト時制はその動作が一回だけ短時間でおわり繰り返さないものであることを示します。このため接続法のアオリストは必ずしも過去のことを言っているわけではなく繰り返しも期間もない一回だけの単純な動作を示しているに過ぎません。これは不定法でも同様です。

直説法のアオリストは一般に歴史的記述や物語の叙述に使われ、フランス語では単純過去や複合過去に相当します。

完了は過去に行われた動作の結果を表現するので事実上現在の表現になります。これは他動詞や受動態で特にそうなります。

  • ἀποθνῄσκει [現在] 彼はまさに死ぬところである
  • ἀπέθνῃσκε [未完了] 彼はまさに死ぬところであった
  • ἀπέθανε [アオリスト] 彼は(ある時期にある状況で)死んだ
  • τέθνηκε [完了] 彼は死んでいる(=現在生きていない)

過去完了はいわゆる英語やフランス語の過去完了、大過去とは異なります。どちらかと言うと未完了に近い意味を持ちます。

  • ἔπεσον [アオリスト] (あるとき)私は落ちた。(そして起き上がった)
  • πέπτωκα [完了] 私は落ちた。(今もそのままである)
  • ἐπεπτώκειν [過去完了] 私は(その時)落ちていた

未来完了は未来の時点で予想される状態を表現します。

  • τεθνήξω 私は(未来のその時点で)死んでいるだろう
  • λελύσεται 彼は解放されているだろう

その他文法上の注意

双数変化は名詞や形容詞だけでなく動詞でも見られます。ただし二人称双数と三人称双数だけで一人称双数は存在しません。また主語が2つのもの、二人の人物である場合には複数変化も許容され双数変化は義務ではありません。

複数の動詞で表現される複合時制は接続法の完了と希求法の完了のみ存在します。この場合受動態では常に複合時制ですが能動態は単純時制のときも存在します。

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