グルヴェイグはヴァン神族の一人とされていてオーディンたちアース神族とは違う種族です。そのグルヴェイグを処刑したことによってヴァン族との争いが避けられない状況となりました。この第23スタンザは神々が三度協議をします。
テキスト
Þá gengu regin öll / á rökstóla,
そして世界を治める力ある神々は 裁定の席へと赴いた
ginnheilug goð, / ok um þat gættusk;
そこで高貴な神々は 協議を行った
hvárt skyldu æsir / afráð gjalda
彼らアース神族が十分な補償をするべきか
eða skyldu goðin öll / gildi eiga.
それともすべての価値を自分たちの欲しいままにするべきかを
Poetic Edda – Völuspá 23
Æsir–Vanir War By Carl Ehrenberg – Wägner, Wilhelm. 1882. Nordisch-germanische Götter und Helden. Otto Spamer, Leipzig & Berlin. Page 194., Public Domain, Link
解説
Þá gengu regin öll / á rökstóla,
ginnheilug goð, / ok um þat gættusk;
神々が集まって協議をする様子を語るこの2行は第6、第9スタンザの最初の2行とまったく同じです。最初は世界の秩序について、2回目は三人の巨人の娘ノルニルへの対応についてでした。今回はヴァン神族の対応になります。文法の説明は第6スタンザのページを見てください。
hvárt skyldu æsir / afráð gjalda
hvártと次の行のeðaで「〜と〜のどちらか」という構文になります。今回の神々の議題です。
skylduは動詞 skulu「〜することになっている」の三人称複数過去で主語はæsir、男性名詞áss「アース神」の主格複数です。skuluは不定動詞をとりますがここではgjalda「支払う」「払い戻す」がそれにあたります。
afráðはafráð「支払い」の対格で単数複数同形なのでどちらかは判別できません。グルヴェイグの処刑に対してヴァン神族に対して補償をすることになるという解釈ができると思います。こちらが選択肢の一つ目です。
eða skyldu goðin öll / gildi eiga.
eða skylduは「それとも〜するべきか」の意味で不定詞eiga「所有する」をとります。eigaは目的語に対格をとり対格中性複数 öll gildi「すべての価値あるもの」がこれにあたります。
主語はgoðinで中性名詞goðの主格複数の後ろに定冠詞がついた形です。最初の選択肢のæsirと同一であることを意味しています。
もう一つの選択肢は開き直って何も補償はしないということになるでしょう。グルヴェイグの意味は「金の強い酒」「金の強さ」の意味であることから何か象徴的なものがアース神に影響を与えたのではないかという説もあります。