ギリシア語の動詞:変化形態のまとめ(1)

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ギリシア語の動詞の変化は例外があるもののその形態に共通性があります。すべてをまる覚えするのは大変なのでその形態を最初に抑えておくと変化形の特定が随分楽になります。

概要

人称語尾

以下は態と時制と人称による語尾をまとめたものです。∅は文字が何も付かないことを意味します。

ギリシア語の原形は直接法能動態一人称単数現在ですが-ωで終わるものと-μιで終わるものの二種類があります。

直説法、接続法、希求法の人称語尾

第一時制(現在、未来、完了)、第二時制(未完了、アオリスト、過去完了)の違いは直説法のみです。接続法ではすべて第一時制と同じ変化をし、希求法では全て第二時制と同じ変化をします。

能動態 中受動態
第一時制 第二時制 第一時制 第二時制
単数 一人称 -ω / ∅ -μι -ν / -μ -μαι -μην
二人称 -εις -σι -ς  -σαι -σο
三人称 -ει / ∅ -τι -τ / ∅ -ται -το
双数 二人称 -τον -την / -τον -σθον -σθην / -σθον
三人称 -τον -την -σθον -σθην
複数 一人称 -μεν -μεν -μεθα -μεθα
二人称 -τε -τε -σθε -σθε
三人称 -ντι -ν(τ) / -σαν -νται -ντο

命令法の人称語尾

能動態 中動態
単数 二人称 -ε / -θι / -ς -σο
三人称 -τω -σθω
双数 二人称 -τον -σθον
三人称 -των -σθων
複数 二人称 -τε -σθε
三人称 -ντων -σθων

二人称単数能動態の-εは語幹母音と解釈されています。

時制と態による接中辞

語幹と変化語尾の間に時制を表す接中辞 infixが挟まれるものがあります。

能動態 中動態 受動態
未来 -σ- -σ- -θη-σ-
アオリスト -σ(α)- -σ(α)- -θη- / -θε-
完了 -κ(α)-
過去完了 -κε-

変化のパターン

直説法の形態

-ω動詞の直説法現在

このうち-ωの動詞は語幹に直接語尾がつくのではなく間に母音が挟まります。語尾の最初の文字がμやνの場合はこの母音がοでそれ以外はεになります。これを語幹母音または語幹形成母音 voyelle thématique と言います。

以下λύωの直説法現在の変化形です。語幹がλύ-で第一時制に沿って語尾変化します。

能動態 中受動態
単数 一人称 λύω λύομαι
二人称 λύεις λύει / λύῃ
三人称 λύει λύεται
双数 二人称 λύετον λύεσθον
三人称 λύετον λύεσθον
複数 一人称 λύομεν λυόμεθα
二人称 λύετε λύεσθε
三人称 λύουσι(ν) λύονται

能動態三人称複数のλύουσιはλύοντιが変化してできた形です。

中受動態二人称単数はλύῃはλύειより古い形です。下でまとめています。

直説法受動態の完了と過去完了

完了は第一時制、過去完了は第二時制の変化に沿って変化します。畳音のある語幹λέλυ-に直接語尾が付きます。過去完了は頭にε-が付きます。これは増加音 augmentというもので第二時制の目印となっています。

完了 過去完了
単数 一人称 λέλυμαι ἐλελύμην
二人称 λέλυσαι ἐλέλυσο
三人称 λέλυται ἐλέλυτο
双数 二人称 λέλυσθον ἐλελύσθην
三人称 λέλυσθον ἐλελύσθην
複数 一人称 λελύμεθα ἐλελύμεθα
二人称 λέλυσθε ἐλέλυσθε
三人称 λέλυνται ἐλέλυντο

ここでは特に例外なく変化している様子が分かります。

中受動態二人称単数について

上の直説法現在中受動態でもありましたが、中受動態の二人称単数の変化は単純に語幹と語尾をつけただけでないものがあります。

変化形 理論上の形
現在受動態 λύει / λύῃ *λύ-ε-σαι
未完了受動態 ἐλύου *ἐλύ-ε-σο
未来中動態 λύσει *λύ-σ-ε-σαι
アオリスト中動態 ἐλύσω *ἐλύ-σα-σο
未来受動態 λυθήσει *λυ-θή-σ-ε-σαι

-σαιや-σοは母音に挟まれると-σ-が消失して、連結した母音が縮約する現象だと解釈できます。

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