直説法の不完了はimperfectといい過去に行われた動作、継続されていた動作を表現するのに使います。その動作が完了しているかどうかは重要視されません。他の言語では未完了、近過去、線過去、半過去などと言われることがあります。「〜していた」あるいは単に「〜した」という意味で使われます。
活用の概要
現在語幹に不完了特有の接辞-(e)ba-がつきそのあとに人称語尾がつきます。能動態では一人称単数以外は現在と同じです。括弧内のeは第三第四活用で出てきます。
二人称単数、一人称複数、二人称複数でaが長母音になり-(e)bā-となります。
現在 | 不完了 | |
---|---|---|
一人称単数 | -ō | -(e)bam |
二人称単数 | -s | -(e)bās |
三人称単数 | -t | -(e)bat |
一人称複数 | -mus | -(e)bāmus |
二人称複数 | -tis | -(e)bātis |
三人称複数 | -nt | -(e)bant |
規則活用の動詞
第一 愛する |
第二 壊す |
第三A 読む |
第三B 取る |
第四 聴く |
|
---|---|---|---|---|---|
一人称単数 | amābam | dēlēbam | legebam | capiebam | audiebam |
二人称単数 | amābās | dēlēbās | legebās | capiebās | audiebās |
三人称単数 | amābat | dēlēbat | legebat | capiebat | audiebat |
一人称複数 | amābāmus | dēlēbāmus | legebāmus | capiebāmus | audiebāmus |
二人称複数 | amābātis | dēlēbātis | legebātis | capiebātis | audiebātis |
三人称複数 | amābant | dēlēbant | legebant | capiebant | audiebant |
注意する点
語幹末尾の母音について
語幹末尾の母音、第一活用の-a、第二活用の-e、第四活用の-iは全ての人称で短母音になります。
第三活用について
Aの場合は語幹の子音のあとに接辞-eba-がつきます。Bの場合は子音のあとにiを挟んでから-eba-がつきます。これは全ての人称変化で共通です。
このためAと第二活用が同じ変化に、Bと第四活用が同じ変化のように見えます。
第四活用について
基本的には接辞はeを含めた-eba-なのですが詩などでは-ba-になることもあります。詩の韻律、リズムに合わせるために出てくる形です。
不規則活用の動詞
語幹の部分が不規則ですが人称変化は規則的です。
sum | eō | volo | ferō |
---|---|---|---|
-である | 行く | 欲する | 運ぶ |
eram | ibam | volēbam | ferēbam |
erās | ibās | volēbās | ferēbātis |
erat | ibat | volēbat | ferēbat |
erāmus | ibāmus | volēbāmus | ferēbāmus |
erātis | ibātis | volēbātis | ferēbātis |
erant | ibant | volēbant | ferēbant |
注意する点
sumについて
sumは-ba-の接辞ではなく-a-となりsumの語幹er-と連結されera-となります。全ての人称が母音eから始まるため派生する動詞も共通の接頭語がつきます。
- possumは頭にpotをつけます。pot + eram = poteram
- prosumは頭にprodをつけます。prod + eram = proderam
eōについて
語幹i-に不完了接辞-ba-がつきます。
volōについて
語幹volē-に不完了接辞-ba-がつきます。派生語のnōlōとmālōの語幹はそれぞれnōlē-、mālē-になります。
ferōについて
語幹ferēに不完了接辞-ba-がつきます。