古典ギリシア語の特殊な記号について

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記号が多い古典ギリシア文字

古典ギリシア語のテキストを見ているとギリシア文字の上や下に色々な記号がついていることがわかります。現代のギリシア文字にはないものもあります。下に例文をつけます。どんな文字があるか、どんな記号がついているかをみてください。

Ἄνδρα μοι ἔννεπε, Μοῦσα, πολύτροπον, ὃς μάλα πολλὰ
πλάγχθη, ἐπεὶ Τροίης ἱερὸν πτολίεθρον ἔπερσε·
πολλῶν δ’ ἀνθρώπων ἴδεν ἄστεα καὶ νόον ἔγνω,
πολλὰ δ’ ὅ γ’ ἐν πόντῳ πάθεν ἄλγεα ὃν κατὰ θυμόν,
ἀρνύμενος ἥν τε ψυχὴν καὶ νόστον ἑταίρων.
ἀλλ’ οὐδ’ ὧς ἑτάρους ἐρρύσατο, ἱέμενός περ·
αὐτῶν γὰρ σφετέρῃσιν ἀτασθαλίῃσιν ὄλοντο,
νήπιοι, οἳ κατὰ βοῦς Ὑπερίονος Ἠελίοιο
ἤσθιον· αὐτὰρ ὁ τοῖσιν ἀφείλετο νόστιμον ἦμαρ.
τῶν ἁμόθεν γε, θεά, θύγατερ Διός, εἰπὲ καὶ ἡμῖν.

ギリシア文字それ自体の上に多くて2個、下にもついているものがあるのがわかります。ほとんどは母音αεηιουωです。以下記号の一覧を書きます。

ά acute accent 鋭アクセント
grave accent 重アクセント
circumflex 曲アクセント
smooth breathing 無気記号
rough breathing 有気記号
iota subscript 下書きイオタ
ϊ diacritic 分離記号

鋭アクセントと重アクセント

鋭アクセントがついた母音はその他より高い音で発音します。一番最後の母音に鋭アクセントがあるものは次に単語が続くと重アクセントになります。重アクセントは記号としての目印だけで音の変化はなくなります。

文中のκατὰ θυμόνは単語単位で見るとκατάとθυμόνですが単語がつながると前の単語κατάの鋭アクセントは重アクセントに変わります。

鋭アクセントは右上から左下に、重アクセントは左上から右下に直線的に書きます。

曲アクセント

曲アクセントは長母音つまり短母音2個分の長さを持つ母音の上に置かれその最初の1個目の場所にアクセントがあることを表します。。二重母音の場合は2個目の母音の上に置かれます。以下ようなイメージです。

ᾶ = ά+α

αῖ = ά + ι

曲アクセントはフォントによって〜のような形になることもあれば括弧 )を横にした丸い山のような形になることもあります。

無気記号と有気記号

ギリシア語にはHつまりハ行を表す子音記号がありません。ちなみにギリシア文字のΗはエの長母音「エー」という音です。有気記号をつけることによりこのハ行の音を表現します。無気記号はハ行にならないことを表しています。これらは基本的に単語の先頭に母音があるときにしか出てきません。

ἁはローマ字にするとha、ἀはaになります。

アクセントがつく場合はἄ ἅ ἂ ἃ ἆ ἇなどと組み合わせて書かれます。

二重母音の場合にはοἵのように二つ目の母音の上に着きます。無気記号は括弧閉じ )のような形で有気記号は括弧始まり (のような形をしています。

下書きのイオタ

αとηとωには弱い「イ」を後ろにつける時に「下書きのイオタ」という記号をつけます。この記号の有無で意味が変わることがあるので慣れないうちは注意して下さい。こちらもアクセントと組み合わされることがあります。

ᾳは「アィ」または「アーィ」、ῃは「エーィ」、ῳは「オーィ」と読みます。

母音の下に短い棒を右に払うように書きます。

分離記号

フランス語のトレマと同じで二重母音に見えるけれど分離した二つの母音であることを表現するときに使います。小さな点を横に二つ母音の上に書きます。知られている限りιとυの上にしか現れないです。こちらもアクセントと組み合わさる場合があります。

αιは二重母音ですがαϊは二つの母音αとιが並んだものになります。

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