ラテン語と違いギリシア語はアクセントがあるので少しばかり敷居が高い印象を受けます。ある程度規則的ではあるのですが自然に納得するには時間がかかりそうです。そもそも古代ではアクセントは自明のものなのでつけられていませんでした。アクセント記号は後の時代につけられたものですからあまり神経質にならないほうがいいかもしれません。
基礎知識
音節の位置の名前
アクセントの位置は音節(syllable, シラブル)の単位で変動します。文法用語としてこの音節の位置を指す言葉があります。「後ろから何番目であるか」ということに注意してください。
名前 | 説明 | 英語の例 |
---|---|---|
antepenult | 後ろから三番目の音節にあるアクセント | cinema operational |
penult | 後ろから二番目の音節にあるアクセント | potato |
ultima | 一番最後の音節にあるアクセント | correct |
音節の長さ
音の長さはモーラ moraという言葉で表されます。通常は短母音は1モーラで長母音と二重母音は2モーラとなります。
- 英語のmoraの複数形はラテン語風にmoraeとなるので2モーラエと本来は呼ぶべきですがここではモーラで統一します。
ただし以下のような例外があります。
語末の-αιと-οιについて
二重母音であっても語末の-αιと-οιは1モーラとして数えられることがあります。動詞の希求法 optativeや名詞の処格 locativeでは2モーラとされますがそれ以外は1モーラとなります。
長母音とイオタ・サブスクリプトについて
ᾳとῃ、ῳは展開するとそれぞれααι、εει、οοιのように3モーラになりそうですが2モーラとして数えます。
アクセントのつけ方と種類
英語のアクセントは主に音の強弱を変化させますがギリシア語は音の高さを変えます。アクセントがついている場所は他より高く発音します。日本語も音の高さによるアクセントpitch accentを使っています。「柿」「牡蠣」「垣」などは音の高さを変えているのがわかると思います。
アクセントの種類は3種類あります。フランス語のアクサンと同じ種類がありますが使われ方は異なります。
名前 | 説明 | 例 |
---|---|---|
鋭アクセント acute accent |
短母音はその音節を高くする 長母音は後半を高くする |
ά έ ή ί ό ύ ώ |
曲アクセント circumflex accent |
長母音のみ 前半を高くする |
ᾶ ῆ ῖ ῦ ῶ |
重アクセント grave accent |
鋭アクセントの変化したもの 目印のみでアクセントはつけない |
ὰ ὲ ὴ ὶ ὺ ὸ ὼ |
ある単語の最後の音節の鋭アクセントである場合、次に接語(アクセントなしの単語)以外が来る場合、その鋭アクセントは重アクセントになります。重アクセントはアクセントとしては音に影響を与えませんが元の鋭アクセントがあったことの目印として使われます。
以下はアクセントのつく場所とアクセントの種類に応じた名前です。アクセントは以下の5種類が存在します。
antepenult | penult | ultima | |
---|---|---|---|
鋭アクセント | proparoxytone | paroxytone | oxytone |
曲アクセント | — | properispomenon | perispomenon |
日本語の訳が存在しないまたは存在してもただのカタカナ表記なので英語のまま書いてあります。曲アクセントはantepenultには存在しません。語末からあまり離れてアクセントがつけられることはありません。