英語では関係なく見えていた二つの言葉が実は一つのラテン語の言葉から派生していた、ということはよくあります。一番よくあるケースは動詞の原形と過去分詞との間で形が違うためそれぞれから派生する言葉が関係なさそうに見えてしまうものです。今回はfrango「壊す」という動詞に関係する英語や日本語の単語を見ます。過去分詞はfractus「壊されたもの」です。
フラグメント・かけら
動詞から派生した名詞fragmentumから英語になりました。いわゆる陶器やガラスなどの割れたものの断片を指す他に文章の一部分なども意味します。
フラジャイル・こわれもの
fragに可能性を表す-ileがついてfragile「かけらになりうるもの」という意味の言葉になりました。外国に壊れやすい荷物を送る時にfragileは必要な言葉です。
frangoから直接派生したfrangibleという言葉も同じ意味になります。これに否定のin-をつけたinfrangibleは「壊れにくい」という意味になります。
分数
分数は英語でfractionと言います。過去分詞fractumに名詞化の語尾がついて「全体の一部」という意味になりました。ちなみに分母はdenominator「名付けるもの」「指示するもの」の意味です。分子はnumerator「数えるもの」の意味です。
フラクタル
fract-に形容詞化語尾-alがついたものです。「壊されたものに関連した」という意味ですが20世紀の後半に出てきた学術用語で「どのスケールで観察しても同じように見える不規則な形状のもの」という意味です。
デフラグ
コンピュータを長いこと使っているとディスクに記憶している部分部分があちらこちらに散らばってしまいます。これを断片化fragmentationと言います。一つのファイルも記憶する場所が部分部分あちらこちらに配置されているので入出力に時間がかかってしまいます。これを修復することをデフラグと呼びます。英語のdefragmentationの略でde-「離れる」が最初につくことから「断片化した状態から離れること」という意味になります。
fracture, infraction, infringement, refraction
そのほか日本語にはなっていませんが英単語にはまだまだfrangoの派生語があります。fractureは「骨折」「骨の砕けること」の意味で使われます。
infractionとinfringementはそれぞれ「違反行為」のことです。in-「入る」という接頭辞をつけてある領域に「壊して入り込む」というような意味を持ちます。infractionは駐車禁止違反など罰金で解決する行為で、infringementは著作権違反など他の人が持つ権利を侵害する行為です。語幹がfring-と母音が変化していますが接頭辞がつくとしばしばこういうことが起こります。
refractionは日本語で「屈折」に相当する単語です。水に入った光が曲がって見える現象のことです。「再び」「今までとは別に」を意味する接頭辞re-がつき「別に壊された(もの)」という意味になります。日本語の「屈して折れる」と少し感覚が違いますがそれまで持っていたエネルギーや方向が異なる物質の境界で「壊された」という解釈になります。反射はreflectionといいこちらはflecto「曲がる」という別な動詞に由来しています。