ギリシア語の動詞:変化形態のまとめ(2)

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接続法の形態

接続法のときには直説法での語幹母音のοやεがωやηになります。以下は能動態の現在で比較しています。

直説法 接続法
単数 一人称 λύω λύω
二人称 λύεις  λύῃς 
三人称 λύει λύῃ
双数 二人称 λύετον λύητον
三人称 λύετον λύητον
複数 一人称 λύομεν λύωμεν
二人称 λύετε λύητε
三人称 λύουσι(ν) λύωσι(ν)

一人称単数は直説法と接続法で同じ形になっています。

接続法では第二時制のうち未完了と過去完了は存在しません。残るアオリストでも第一時制の人称語尾が付きます。

希求法の形態

人称語尾の直前に-οι-や-σαι-が挟まれます。能動態の現在の比較です。

直説法 希求法
単数 一人称 λύω λύοιμι
二人称 λύεις  λύοις 
三人称 λύει λύοι
双数 二人称 λύετον λυοίτην
三人称 λύετον λυοίτην
複数 一人称 λύομεν λύοιμεν
二人称 λύετε λύοιτε
三人称 λύουσι(ν) λύοιεν

人称語尾は異なっていますが直説法の語幹母音-ε-や-ο-が-οι-に置き変わっていることがわかります。

以下は能動態のアオリストの比較です。

直説法 希求法
単数 一人称 ἔλυσα λύσαιμι
二人称 ἔλυσας  λύσειας / λύσαις  
三人称 ἔλυσε(ν) λύσειε / λύσαι
双数 二人称 ἐλυσάτην λυσαίτην
三人称 ἐλυσάτην λυσαίτην
複数 一人称 ἐλύσαμεν λύσαιμεν
二人称 ἐλύσατε λύσαιτε
三人称 ἔλυσαν λύσειαν / λύσαιεν

こちらでは-σα-に置き換わっています。また第二時制を示すε-は直説法以外では出てきません。

-μιで終わる動詞では-οι-の代わりに-ι-や-ιη-となるものがあります。一般にアオリストの受動態では-ω動詞でも同様の現象が見られます。時制の接中辞-θη-や-θε-と希求法の接中辞-οι-とぶつかり縮約や類推からこのような変化を起こります。-ω 動詞のアオリスト受動態の比較です。

直説法 希求法
単数 一人称 ἐλύθην λυθείην
二人称 ἐλύθης  λυθείης 
三人称 ἐλύθη λυθείη
双数 二人称 ἐλύθητην λυθείτην
三人称 ἐλύθητην λυθείτην
複数 一人称 ἐλύθημεν λυθεἴμεν
二人称 ἐλύθητε λυθεἴτε
三人称 ἐλύθησαν λυθεἴεν

例えば完了の能動態一人称単数希求法はλελύκοιμιですが分解すると以下のようになります。

  • λε-は完了語幹で生じる畳音
  • -λυ-は語幹の中心となる単純語幹
  • -κ-は完了を示す接中辞
  • -ο-は語幹母音
  • -ι-は希求法を示す接中辞
  • -μιは人称語尾

命令法の形態

命令法の人称語尾は他のものと別な形になります。古い時代の接辞 -τωや-θιが変化によって現れます。

不定法の形態

不定法の語尾は-εν、-αι、-ναι、-σθαιです。

変化形 理論上の形
現在能動態 λύειν *λυ-ε-εν
現在中受動態 λύεσθαι *λυ-ε-σθαι
未来能動態 λύσειν *λυ-σ-ε-εν
未来受動態 λυθήσεσθαι *λυ-θησ-ε-σθαι
未来中動態 λύσεσθαι *λυ-σ-ε-σθαι
アオリスト能動態 λῦσαι *λυ-σ-αι
アオリスト受動態 λυθῆναι *λυ-θη-ναι
アオリスト中動態 λυσασθαι *λυ-σα-σθαι
完了能動態 λελυκέναι *λε-λυ-κ-ε-ναι
完了中受動態 λελύσθαι *λε-λυ-σθαι

分詞の形態

形容詞の変化と似た形になります。

  1. アオリスト受動分詞を除く全ての中動分詞、受動分詞は-ος, -η, -ονの変化をします。男性と中性は第二変化形、女性は第一変化形になります。
  2. 完了を除く全ての能動分詞、アオリスト受動分詞で接中辞-ντ-が付き、さらに格と性と数で変化します。男性と中性は第三変化形、女性は第一変化形になります。
  3. 現在と未来の分詞では語幹母音-ο-が挿入されます。
  4. 現在能動分詞と未来能動分詞では3の語幹母音と2の接中辞が続き-οντ-の形になります。主格男性単数は-ωνの語尾を持ちます。女性は-οντα → -ονσα → -ουσαと変化します。
  5. 一般に主格と呼格は同じ形になります。ただし上記1のときの主格男性単数と呼格段性単数はそれぞれ -οςと -εとなり異なる変化となります。

ギリシア語の名詞変化:第一変化形(1)
ギリシア語の名詞変化:第二変化形(1)
ギリシア語の名詞変化:第三変化形(1)

-ω動詞と-μι動詞について

ギリシア語の動詞は直説法一人称単数現在能動態の語尾が-ωか-μιかによって二種類に分かれます。-ωで終わる動詞の方が圧倒的に多いです。この違いによる影響は能動態の現在と未完了、たまにアオリストで現れます。

ギリシア語の祖語と言われる印欧祖語ではこの両方が存在したと推測されています。ラテン語ではこのうち-μι動詞が消えてしまい、一方でサンスクリットでは-ω動詞のほうが消えてしまいました。ギリシア語ではこの両方を保持していたのです。

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