サンスクリットとはラテン語やギリシア語と同じく印欧語族に属するインドを起源とする言語です。サンスクリットに「語」の意味が含まれるため言語であることを明示する必要がない限り「語」は付けられません。サンスクリットがヨーロッパの言語と共通の祖語を持つと考えられるようになったのはここ3世紀に満たないくらいのことです。
サンスクリットで書かれた作品というと『バガヴァッド・ギーター』श्रीमद्भगवद्गीता や『ラーマーヤナ』 रामायण などが有名ですが日本にとっては仏教の経典のオリジナルがサンスクリットで書かれていたという事実は重要です。
サンスクリットの成立
およそ紀元前20世紀から15世紀の間に『ヴェーダ』 वेदというインドの知識の聖典が成立したと言われています。そこで使われている言葉がサンスクリットの知られる限りの最初の姿です。
ヴェーダはたくさんの部分から成り立つもので文字に書かれることがなく人の記憶によって伝承されてきました。一人の人間の記憶できる量は限られるため一つの経典を二人で覚えていたと言われています。二人で覚えたのは一人が間違えたり忘れたりしても他の一人がそれを補えるからです。
紀元前4世紀にパーニニपाणिनि という言語学者がサンスクリットの文法をまとめたと言われ現在でもサンスクリットの文法を習得するときにはパーニニの名付けた文法用語が使われます。
サンスクリットとは「規則によって準備された」という意味を持ち初期には一部の僧侶に共有されていましたが徐々に広まっていき様々な文化を支える基軸の言語となりました。サンスクリットに地理的な境界は明確にありませんがヒンドゥ教とインドの文明により密接な関わりを今でも保っています。また口語に影響を与える一方で文法についてはパーニニの時代からほとんど形を変えたことがありません。
サンスクリットは死語か
ラテン語が死語と言われるのと同じ文脈でサンスクリットは死語である主張がされることがありますが事はそう単純では無いようです。実際にはサンスクリットを日常語として使われる地域があります。
- インド南部Karnataka州Shivamogga市近郊のMattur村
- インド北部Madhya Paradesh州Rajgarh地区のJhiri村
多言語社会であるインドでは戦略的に日常語を選択するということもあり得るようです。古典言語を学んでいれば古代の知識を活かすことができますし教師のような技能職につくことも可能になります。
サンスクリットはインドの22の公用語のうちの一つでありインドの標語はサンスクリットでसत्यमेव जयते「まさに真理は自ずと勝利する」と定められています。古典語であることが地域性を薄め国全体で偏りなく使える長所となっています。
ニューデリーにはRashtriya Sanskrit Sansthanのようなサンスクリット教育機関も存在します。
このような事情を考えるとサンスクリットは決して死語とは言えませんしヨーロッパでのラテン語よりも強い存在感を持っているように見えます。