与格とは
与格は英語でdativeと言い、ラテン語do「与える」の過去受動分詞datus「与えられたもの」に-iveがついて形容詞になったものです。「与えられたものに関する」というほどの意味です。日本語のデータも同じ過去受動分詞の中性複数data「与えられたもの」からきています。中性は抽象的なものを意味するときによく使われます。
与格はその意味のとおり「与えられたものの行き先」を説明します。
動詞の補語としての用法
英語に与格という格は存在しませんが文法でいうとその主な役割は関節目的語として説明されているものに相当します。前置詞toを使って「与えられたものの行き先」を説明します。
I give it to you.
同じことをラテン語でいうと
tibi id do.
となります。同じ色がそれぞれ相当する単語になります。
ラテン語は語順が自由なので日本語の
私はあなたにそれをあげる。
に近い並べ方ができますし本動詞が最後にくるのはラテン語の語順としては自然なことのようです。
所有の与格
上の表現で、与格の人にとって与えられたものは自分のものになります。
私はあなたにそれをあげる。
は結果として以下の意味にもなります。
それはあなたのものとなる。(このことは私によってなしとげられる。)
英語では
I have a daughter.
を少々堅苦しい言い方かもしれませんが
There is a daughter to me.
とも言えます。日本語での
私には娘がいます。
も所有の与格的な表現といえるでしょう。ラテン語では
mihi filia est.
となります。
面白いのはラテン語も日本語も語順がかなり自由なので同じ言い方ができることです。これは英語やフランス語にはできないことです。日本語もある意味では古代から続く古典言語の系譜をもっているので当然ともいえるのでしょうか。
関心の与格
ある行為の結果影響を受ける相手を与格で表します。英語ではforという前置詞が使われます。
I fight for you.
あなたのために私は戦う。
tibi pugno.
ここの「あなた」が受ける影響は良いこととは限りません。前後関係がないとなんとも言えないのですが、もし「私」が悪意をもって戦うのであれば「あなた」が受ける影響は悪い場合もありえます。
他の用法
他にもいくつか用法があります。目的の与格、行為者の補語、形容詞の補語などです。こちらも機会があるときに追記します。