第13スタンザも引き続きドヴェルグ族の列挙です。前のスタンザで「数え上げた」と終わりそうなことを語っていましたがまだ続いています。
テキスト
Fíli, Kíli, / Fundinn, Náli,
ヤスリのフィーリ、クサビのキーリ、見つけられたフンディン、針のナーリ
Hepti, Víli, / Hanarr, Svíurr,
短剣を持つヘプティ、強い意思のヴィーリ、巧みなハナル、癒しのスヴィーウル
Billingr, Brúni, / Bíldr ok Buri,
双子の一人ビリング、茶色いブルーニ、槍のビールド、ものづくりのブリ
Frár, Hornbori, / Frægr ok Lóni,
素早いフラー、ツノを使うホルンボリ、有名なフレーグと静かなロー二
Aurvangr, Jari, / Eikinskjaldi.
ぬかるんだ野原のアウルワング、戦士のヤリ、樫の盾のエイキンスキャルディ
Poetic Edda – Völuspá 13
By Lorenz Frølich – Published in Gjellerup, Karl (1895). Den ældre Eddas Gudesange. Photographed from a 2001 reprint by bloodofox (talk · contribs)., Public Domain, Link
解説
Fíli, Kíli, / Fundinn, Náli,
Fíliは「ヤスリで削る人」の意味で古サクソン語や古高ゲルマン語の fīla「やすり」から来たと言われ英語にもfileという単語があります。もともと古ノルド語には別の単語があったようですが交易により置き換わってしまったようです。Kíliは「楔を使う人」の意味ですこちらも外来語でスカンジナビアではveggrという単語を駆逐していったようです。
Fundinnは動詞 finna「見つける」の過去分詞です。Náliは「碾き臼の軸」の意味もあると言われますが女性名詞 nál「針」のほうが確からしいです。
Hepti, Víli, / Hanarr, Svíurr,
Heptiは動詞 hepta「挟む」か名詞hepti「短剣の柄」の意味です。Víliは由来が不明とされていますが上のFíliの語呂合わせか、名詞vili「意思」からとも言われています。これは英語のwillと同じ由来です。
Hanarrはhannarr「巧みな」から来ていると言われています。Svíurrはおそらく動詞svína「縮まる」から来ていて「痛みをなくす人」「消えた人」の意味が候補に出ています。
Billingr, Brúni, / Bíldr ok Buri,
Billingrは「双子の兄弟 」の意味と言われています。Brúniは形容詞 brúnn「茶色い」から、Bíldrはクサビを使った武器、例えば弓矢や槍の意味とされています。Buriはburr「息子」の意味でオーディンの父のBurrまたはBorrと同じ由来です。あるいは動詞bera「産む」から物を作る人とも考えられます。
Frár, Hornbori, / Frægr ok Lóni,
Frárは 形容詞 frár 「素早い」から、Hornboriはhorn「動物のツノ」と動詞 bora「穴を開ける」の複合語です。
Frægrは形容詞 frægr「有名な」から来ています。Lóniは中性名詞 lón「沼」「潟」など流れのない水がある場所をさし、ここから「静かな人」「怠惰な人」という意味になっています。
Aurvangr, Jari, / Eikinskjaldi.
Aurvangrは男性名詞aurr「泥」と男性名詞 vangr「野原」の複合語です。Jariは女性名詞 jara「戦い」から「戦士」の意味とされています。
Eikinskjaldiは形容詞 eikinn 「樫でできた」と男性名詞 skjǫldr「盾」の複合語です。それぞれ英語のoakとshieldと同じ由来です。
以上諸説あるなかでの抜き書きです。