第12スタンザは引き続きドヴェルグ族の列挙です。グールドの『ドワーフの名前』を参考にできる限り由来を調べてあります。
テキスト
Veggr ok Gandálfr, / Vindálfr, Þorinn,
楔のヴェッグと魔法の杖のガンダールフ、風のヴィンダールフ、大胆なソリン
Þrár ok Þráinn, / Þekkr, Litr ok Vitr,
頑固なスラーと頑固なスラーイン、愛されセック、赤ら顔のリトと賢いヴィト
Nýr ok Nýráðr, / nú hefi ek dverga,
若いニューと風変わりなニューラーズ、今私はドヴェルグたちを挙げた
Reginn ok Ráðsviðr, / rétt um talða.
力あるレギンと忠告者ラーズスヴィズ、しっかりと数えて
Poetic Edda – Völuspá 12
白雪姫に出てくる小人はドヴェルグ族のことです。Public Domain, Link
解説
Veggr ok Gandálfr, / Vindálfr, Þorinn,
Veggrは男性名詞veggr「壁(切妻壁)」「楔」との関連があります。GandálfrはGandr「魔法の杖」とálfr「エルフ(妖精の種族)」の複合語で「魔法の杖を持ったエルフ」です。トールキンの『指輪物語』にもガンダルフという登場人物が出ていますがそこではドヴェルグではなく魔法使いです。もともとの言葉の意味から考えると逆にドヴェルグ的でない名前です。
Vindálfrはvindr「風」とálfrの複合語で「風のエルフ」という意味です。Þorinnは動詞þora「あえて〜する」という動詞から「大胆な」の意味を持つようです。
Þrár ok Þráinn, / Þekkr, Litr ok Vitr,
Þrárと Þráinnはともに形容詞þrár「頑固な」から来ています。Þekkrは形容詞「同意できる」「愛される」から来ています。
Litrは男性名詞 litr「色」、特に顔の赤みを表すようです。Vitrは形容詞 vitr「賢い」から来ています。
Nýr ok Nýráðr, / nú hefi ek dverga,
Nýrは一つ前にも出て来たNýiと同じく形容詞 nýr「新しい」から来ています。Nýráðrは形容詞nýráðliga「予想外の」や nýráðligr「新しく工夫された」「風変わりな」からきていると言われています。
後半は通常の文章です。núは副詞「今」、hefiはhafa「持つ」の一人称単数過去形、dvergaはドヴェルグの対格複数です。
Reginn ok Ráðsviðr, / rétt um talða.
Reginnはregen「高い地位の権力者」「神々」に由来し「力あるもの」の意味です。Ráðsviðrは中性名詞 ráð「忠告」「アドヴァイス」から来ています。
上の行と同じく後半は通常の文章です。上の行の後半の副詞句のようです。副詞 réttは「正しく」、umは前置詞で「について」talðaは不定動詞で「数を数える」「伝える」