これまでずっとドヴェルグ族の名前を並べて来ましたが一度ここでまとめに入っています。第14スタンザで示される今後の展望通りこの後にもドヴェルグ族の名前がしばらく続くことになります。
テキスト
Mál er dverga / í Dvalins liði
系譜はドヴェルグ族を 怠惰なドヴァリンの一族において
ljóna kindum / til Lofars telja,
人々の血筋において 誉あるロヴァルまでかぞえあげる
þeir er sóttu / frá salar steini
彼らは探し求めた 世界の岩々サラルステインから
Aurvanga sjöt / til Jöruvalla.
アウルワングたちの住まいを 戦場であるヤールヴァッラまで
Poetic Edda – Völuspá 14
Par Adalbertus — Travail personnel, GFDL, Lien
解説
Mál er dverga / í Dvalins liði
málは「話」を意味するのとは別に「定規」「測り」を意味する中性名詞でもあります。ここの文の構造は難解でいろいろな英訳も調べたところ上のような日本語訳に落ち着きました。
erは関係代名詞の他に場所を意味する関係副詞でもあり動詞veraの三人称単数現在でもありいますが、この第14スタンザ全体が関係副詞erによる関係節であり次の第15スタンザのþarでこれを「第14スタンザで語られた場所において」という受け方をするものとして考えました。ただし訳はこの二つのスタンザを並置しています。
dvergaは対格複数でíは前置詞、次に続くliðiが男性名詞liðr「メンバー」の与格であることから動きのない「〜の中で」の意味になります。DvalinsはDvalinnの属格で第11スタンザで名前の出て来たドヴェルグです。
ljóna kindum / til Lofars telja,
ljónaは「ライオン」と訳されることがありますが複数のみの男性名詞ljónar「人々」の属格です。ここでいう「人々」はドヴェルグとはちがう人間の種族を意味しているのかドヴェルグ族を単に「人々」と行っているのかは不明ですがおそらくざっくりとドヴェルグ族のことを言っていると思われます。kindumは女性名詞kind「血族」の与格複数です。lijóna kindumは同じ対格であるDvalins liðiの言い換えです。
tilは前置詞で「〜まで」、英語のtillと同じ由来です。この前置詞は属格を取りLofarsはドヴェルグの固有名詞 Lofarrの属格です。動詞 lafa「讃える」に由来し「讃える価値のあるもの」という意味になります。teljaは動詞 telja「(系譜などを)かぞえあげる」の三人称複数現在で主語は前行のmálです。この単語は単複同型ですが動詞に合わせて複数となります。
þeir er sóttu / frá salar steini
þeirは人称代名詞の三人称複数主格で「彼ら」です。erは1行目に書いたのと同じ関係副詞でしょう。sóttuは動詞 skœja「探す」の三人称複数過去です。fráは英語のfromと同じく「〜から」の意味の前置詞で与格をとります。steiniは与格単数です。第4スタンザにá salar steina「広い世界の岩々の上へ」という表現が出て来ましたがここでは固有名詞を当てました。
Aurvanga sjöt / til Jöruvalla.
sjötは中性名詞「住まい」の対格単数です。Aurvangaはドヴェルグ名 Aurvangrの複数属格なので「アウルワングたちの」と訳してあります。tilは前行のfráと対応しています。JöruvallaはJöruvöllrの属格複数で女性名詞 jara「戦い」と男性名詞 völlr「野原」の複合語です。