古代ギリシアの音楽(2)

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古代ギリシアの音楽は現代の私たちまで深い影響を与えています。日本語でも何気なく使っているミュージック、リズム、メロディー、ハーモニーなどの言葉は全て古代ギリシアの音楽用語です。ギリシア人は哲学に対して持っていた知的好奇心を音楽にも同様に向けたのです。

古代ギリシアの音楽(1)

音楽に対する姿勢

古代ギリシアでは音楽は教育の一環として重要な位置を占めていました。音楽は美的感性を養うのに最良のものと考えられ、またそのような素養を持つことは人間として(少なくともギリシア人として)欠くことのできないものとされていました。音楽を分析的に捉えその結果としてたくさんの音楽用語が作られました。最初にあげた音楽用語のうちハーモニーについては現在と使われ方が異なります。現在では和音や和声など同時になる音の関係を言いますが当時は時間の流れで変わる音同士の関係や順序の意味で使われていました。

ピュタゴラスの一派の理論

哲学者ピュタゴラスとその弟子達は音に数学的な意味を見出した最初の人たちでしょう。二つの弦をオクターブの関係に調律して同時に鳴らすと一本の弦を鳴らす時よりも鋭い音がします。この時の短い音の弦と長い音の弦の比は1:2の関係になります。このように2:3、3:4の関係に当たる音を導き出しました。それぞれドとソ、ドとファの関係になります。このような流れからピュタゴラス派は7種類の音階modeを形作ります。これは中世のカトリック教会での理論を経て現在まで受け継がれています。ただし現在のものと当時のものは名前も対応する音階も少し異なります。

古代ギリシアでの中心になっていた音階はドリアンdorian modeと呼ばれミから始まりミで終わります。その上にファから始まるヒュポリディアンhypolydian、ソから始まるヒュポフリジアンhypophrygian、ラから始まるヒュポドリアンhypodorian、シから始まるミクソリディアンmyxolydian、ドから始まるリディアンlydian、レから始まるフリジアンphrygianと続きます。これらはギリシア人から見た東方の異国の概念がつまった命名となっています。音階には現在の半音(鍵盤の隣同士の音)よりもさらに細かい4分の1音の音程もありました。

それぞれの音階にはただの音の並び以上の深い意味がありました。これをエートス(ἦθος, ethos)が表出したものと考えられていました。エートスはその場所の習慣やその場所の気風、さらに転じてその土地の独特の手段やモラルといった意味に使われていました。例えばドリアンは彼らのシステムの中心的なもので純粋で異国のものの中でも素晴らしく、気高いものと捉えられていました。ドリアンは建築用語でもドーリア式建築などとして使われています。またプラトンはフリジアンを神聖なデュオニューソス的で賞賛すべきものとしていますしミュクソリディアンは哀調を帯びたものと言われています。

このような話を聞いた上でも現代人の耳からはなかなか違いがわかりにくいと思います。しかし当時は悲劇に使われる音階、神々を讃える歌に使われる音階、祭りの音階はそれぞれ異なるエートスを持つ音階で作られていました。

リズム

プラトンと同時代のタランティノスのアリストクセノス(Ἀριστόξενος ὀ Ταραντίνος)は詩のリズムについての知見を残しています。ギリシア語には長い母音と短い母音があり短い母音が二つあると長い母音と同じ長さになります。この法則をもとに当時の詩を体系的に整理しています。ギリシア語でアゴーゲー(ἀγωγή)という音のテンポやリズムを表す言葉で説明されています。音楽用語で現在でもアゴーギグagogicという言葉が残っています。

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