アレクサンドロス大王から彼の美しい愛人を譲り受けた画家アペレスはその後どうなったのでしょうか。顛末はプリニウスの口から語られています。
sunt qui venerem anadyomenen ab illo pictam exemplari putent.
アペレスによって描かれた「海より出づるウェヌス」は彼女がモデルになっていると考えるものもいる。
suntは三人称複数現在で「彼らがいる」という意味です。主語はqui以下の関係節で語られています。関係節の動詞はputo「考える」の三人称複数現在 putentです。ちなみにこの単語は「数える」「計算する」の意味もあり con 「一緒に」がつくとコンピューターの語源になります。
考える内容は不定句で記述されています。venerem anadyomenenはいわゆる「海より出づるウェヌス」と呼ばれる絵画のモチーフです。ab illoは「彼によって」、pictam「描かれた」と説明があります。exemplariは動詞 exemplo「例として導く」の受動態の不定法で主語は省略されていますがパンカスペで彼女がアペレスの描いた絵のモチーフになっていることになります。ただsuntで「そう考えるものがいる」とあるので確定した事実ではないようです。状況証拠からそう考えられるといったところでしょうか。
ボッティチェッリによって描かれた貝の上に立つヴィーナスの絵は現代でも非常によく知られています。近所のファミリーレストランでもこの絵は見かけるほどです。この絵の本当の由来は2300年前の世界の王と偉大な画家との友情、それを取り次いだ美しい女性にあると考えると私たちの知っている芸術はどれほど古代の人々に負っているかを感じないわけにはいきません。
By サンドロ・ボッティチェッリ – Adjusted levels from File:Sandro Botticelli – La nascita di Venere – Google Art Project.jpg, originally from Google Art Project. Compression Photoshop level 9., パブリック・ドメイン, Link