名詞句は格と性と数を一致させる(2)

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格の一致

前回の続きです。前回はフランス語で性と数が一致するのを見ました。

名詞句は格と性と数を一致させる(1)

今回は格の一致を説明します。フランス語は名詞や形容詞が格で変化しないのでラテン語で説明します。
まず名詞です。「女の人」を表すfeminaを使います。女性名詞です。単数と複数を横に並べてあります。単数はsg.という略称、複数はpl.という略称を使います。

case sg. 和訳 pl. 和訳
主格 nom. fēmina 女の人は fēminae 女の人たちは
呼格 voc. fēmina 女の人よ! fēminae 女の人たちよ!
対格 acc. fēminam 女の人を fēminās 女の人たちを
属格 gen. fēminae 女の人の fēminārum 女の人たちの
与格 dat. fēminae 女の人に fēminīs 女の人たちに
奪格 abl. fēminā 女の人から fēminīs 女の人たちから

これは第一変化形と呼ばれるものでラテン語の名詞の最初によく見られる表です。単複2種類の数と6種類の格で12種類に変化します。

よく見てみると同じ変化のものがみられます。主格と呼格では単数でも複数でも同じ変化をしています。単数の属格と与格、複数の主格と呼格の4つは同じです。単数の主格、呼格と奪格は同じように見えますが主格と呼格は短母音ǎ、奪格は長母音āで終わっています。複数の与格と奪格も同じです。ただし女性の他の名詞は第一変化形とは違う変化をするものもあります。

次に形容詞を付け「幸せな女の人」としました。形容詞は男性、女性、中性で形が変化しますがfeminaは女性なので女性の変化になります。

case sg. 和訳 pl. 和訳
nom. fēmina laeta 幸せな女の人は fēminae laetae 幸せな女の人たちは
voc. fēmina laeta 幸せな女の人よ! fēminae laetae 幸せな女の人たちよ!
acc. fēminam laetam 幸せな女の人を fēminās laetās 幸せな女の人たちを
gen. fēminae laetae 幸せな女の人の fēminārum laetārum 幸せな女の人たちの
dat. fēminae laetae 幸せな女の人に fēminīs laetis 幸せな女の人たちに
abl. fēminā laetā 幸せな女の人から fēminīs laetis 幸せな女の人たちから

laetaはfeminaと同じ変化の仕方をしますが形容詞によっては別なものもあります。

形容詞は男性の名詞であれば男性の変化、中性であれば中性の変化をするため性で3種類、数で2種類、格で6種類の36種類の変化形があります。

また語順は形容詞が先でも名詞が先でも大丈夫ですし離れた場所にあってもよいのです。

幸せな女の人が悲しい男の人に話をした

という文章でも順番を変えて

女の人が 男の人に 話をした 幸せな〜が 悲しい〜に

というような語順も詩などの韻文では普通に存在します。形容詞も変化するため役割を見失わないのです。上の例では性数格が一致しているもの同士を同じ色で表しています。役割がわかっているのでいくら語順を変えても「悲しい女の人」とか「幸せな男の人」になることはありません。

ローマ人はこのような性数格の変化を普通に使っていました。最初は戸惑うかもしれませんがこれも古典の旅の楽しみの一つと思ってください。そのうち慣れますし、なるほど確かに便利だと思うときもあるはずです。

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