巫女の予言(16)ドヴェルグのカタログその6

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このスタンザで延々と続いてきたドヴェルグの列挙が終わります。この一連のドヴェルグ族のカタログはあまり重要でないとの意見もあります。ここではそのような判断はせずなるべく由来がわかるように訳しました。おそらく当時の人にとってはこれらの名前は親しみのあるもので、自分の知っている名前が出てくることで聞き手は盛り上がったのではないかと思います。

テキスト

Álfr ok Yngvi, / Eikinskjaldi,

妖精エルフのようなアールヴと神フレイのようなユングヴィ、

樫の盾のエイキンスキャルディ、

Fjalarr ok Frosti, / Finnr ok Ginnarr;

薄板のフジャラルと冷たいフロスティ、魔術師フィンと詐欺師ギンナル

þat mun æ uppi, / meðan öld lifir,

ずっと忘れないように、人々の生きる限り、

langniðja tal / Lofars hafat.

長い子孫の話を、誉あるロヴァルの一族を

Poetic Edda – Völuspá 16

Nibelungenhalle-23082014-11.jpg
By © Axel Kirch / CC BY-SA 4.0 (via Wikimedia Commons), CC BY-SA 4.0, Link

Álfr ok Yngvi, / Eikinskjaldi,

Álfrは男性名詞「妖精エルフ」のことで、ドヴェルグを「エルフ」と呼ぶのは少し奇妙ですが次のYngviも同様です。Yngviはヴァン神族のFreyr「フレイ」の別名です。Eikinskjaldiは第13スタンザですでに出てきました。

Fjalarr ok Frosti, / Finnr ok Ginnarr;

Fjalarrは女性名詞 fjǫl「薄板」か、少し根拠が薄いのですが動詞 fela「隠す」の由来とされています。Frostiは女性名詞 frost「霜」に由来します。これは英語と同じ単語なのでしっくりきます。

Finnrは「フィンランド人」「ラップ人」を意味する finnrから来ていますが当時ラップ人は魔法を使うと信じられていました。Ginnarrは動詞 ‎ginna「欺く」から来ています。

þat mun æ uppi, / meðan öld lifir,

この行と次の行で一つの文章になっていますが写本によって記述に揺れがあり解読が困難でした。munは動詞munaの二人称単数命令法でþatを目的語にとり「それを覚えていなさい」という意味になります。他にmanという記述もありこちらは同じ動詞の一人称単数現在か三人称単数現在で前者の場合はþatを目的語にとり「私はそれを覚えている」となり、後者はþatを主語にとり「それは覚えている」となります。英訳なども見比べた結果最初のmunが有力だと判断しそれに合わせて訳してあります。その場合þatは対格で形式上の目的語で実際は次の行に書かれているものと解釈します。また目的語を主語にし受動態の未来形のような「それは忘れられることはないだろう」という訳しかたもできます。

æは「ずっと」を意味する副詞で英語のeverに、uppiも副詞で英語のupに相当します。meðanは接続詞「〜の間」の意味で英語のwhileに相当します。öldは女性名詞で単数でも集合的に「人々」の意味になります。lifirは動詞lifa「生きる」の三人称単数現在で英語のliveに相当します。

langniðja tal / Lofars hafat.

langniðjaはlangr「長い」と男性名詞 niðji「子孫」の属格です。単数複数で同じ形なのでどちらかは判別できません。talは中性名詞tal「話」の対格でþatの実態だと考えられます。

Lofarsは ドヴェルグ Lofarrの属格で第14スタンザに出ていました。hafatは辞書にない言葉ですがある英訳でrace「種族」とされていました。動詞hafaの変化との推測もありますが実際にはそのような変化系はありません。その前の単語 Lofarsが属格であることを考えると次に名詞が来るのが自然です。

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