古典言語の発音は現在日常的に話されることがないため推定するしかありません。古ノルド語の発音も推定の域を出ませんが現代のアイスランド語やその他古ノルド語を祖語とする言葉からかなり正確に復元されているようです。
日本人には英語の発音も難しいとされていますが大事なのはそれぞれの音の違いを意識することです。日本語では区別のできないBとVや、RとLなどの子音は発音できるできないにかかわらず常に違いを意識する必要があります。
古ノルド語の発音
以前文字に付いて説明した時に少し音についても触れましたが再度整理したいと思います。
古ノルド語で使うアルファベットは以下のものです。
a á b d ð e é f g h i í j k l m n o ó p r s t u ú v x y ý z þ æ œ ö ǫ ø
このうちöとǫはほぼ同じ音につかわれ各所で混同されています。
母音 vowel
短母音と長母音の関係をまず見ます。短母音は短く長母音は長く発音します。日本語のアとアーの関係です。
短母音 | 長母音 | 説明 |
---|---|---|
a | ア | |
ö ǫ | á | 丸い口のオに近いア |
e | é | エ |
i | í | イ |
o | ó | オ |
u | ú | ウ |
y | ý | ユ |
æ | アの口のエ | |
ø | œ | オの口のエ |
æは英語のcatやashに近い音です。øとœは英語のbirdのirに近い音です。
二重母音 diphthong
二つの母音が並んだものでこの組み合わせで音が決まっているものです。音の長さは長母音と同じ扱いをします。
二重母音 | 説明 |
---|---|
au | アウ 英語のhouse |
ei | エイ 英語のrain |
ey, øy | ユイ |
子音
子音のほとんどはその音の通りに発音すれば良いものです。二つの子音が続く時にはその子音を長めに発音してください。
日本語では子音だけの音はンをのぞくとないため子音が連続する時の発音は間に母音が入らないように注意してください。
F
単語の頭ではフ[f]の音、単語の中ではヴ[v]の音になります。silfrは「銀」の意味です。このfは語中にあるのでvの発音になりシルヴルのような発音になります。英語のsliverと結果的に近い音になります。北欧神話で竜に変身するFáfnirはファーヴニルのように発音します。
G
Gはかならずガ行になります。英語のgemのようにジャ行にはなりません。またSとTの前では無音のchになります。これはドイツ語のバッハのハにあたる喉から空気を押し出すような音になります。
J
ドイツ語のようなヤ行になります。
R
スペイン語のような巻き舌のRです。
S
常にサ行です。ザ行にはなりません。
V
通常はヴァ行です。ただし子音の後に続く時にはワ行になります。hvatは英語のwhatと同じ「何?」を意味する言葉ですが発音も同じです。
þ ð
英語のアルファベットにはない特殊な子音ですが英語のthに相当します。þは無声のthで英語のthingに使われているものです。タ行とサ行の間の音です。
ðは有声のthでthisやthatに使われるものです。ダ行とザ行の間の音です。
例
北欧神話に出てくる神々それに関係する単語を並べます。うまく発音できるでしょうか?
- Óðinn
- Þórr
- Baldr
- Freya
- Frigg
- Hel
- Valhǫll
- Valkyrja