巫女の予言(27)隠されたヘイムダルの角笛

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この第27スタンザでは神々の最終戦争であるラグナロクへの伏線が語られています。

テキスト

Veit hon Heimdallar / hljóð um fólgit

彼女は知っている ヘイムダルの角笛が隠されていることを

undir heiðvönum / helgum baðmi;

名誉を求める 聖なる木の下に

á sér hon ausask / aurgum forsi

彼女は見ている 泥水が滝のように流れる川を

af veði Valföðrs. / Vituð ér enn eða hvat?

それはヴァルファズルの担保から流れ出ている — 知っているね?

Poetic Edda – Völuspá 27

403px-Heimdallr by Froelich.jpg
Public Domain, Link

解説

Veit hon Heimdallar / hljóð um fólgit

veitは動詞 vita「知っている」「気づいている」の三人称単数現在でhon veitで「彼女は知っている」となります。

残りがその知っている内容で分詞構文になっています。HeimdallarはHeimdallrの属格でヘイムダルという神のことです。第1スタンザには mögu Heimdallar 「ヘイムダルの子供達」という表現がありましたが「人間」のことを指していると言われています。hljóðは中性名詞 hljóðの対格単数で「沈黙」「聴くこと」の意味の他に「トランペットのような楽器」の意味もあります。fólgitは動詞 fela「隠す」の過去分詞対格中性単数でhljóðに一致しています。umは完了を意味する接辞で動詞の前にきますが通常は訳しません。

Heimdallar hljóð um fólgitで「ヘイムダルの楽器が隠されていること」となります。

ところで「ヘイムダルの楽器」とはGjallarhorn ギャラルホルンと呼ばれる角笛でこれが吹かれるとラグナロクという神々の最終戦争が始まると言われています。

undir heiðvönum / helgum baðmi;

undirは与格を取る前置詞で英語のunder「〜下に」に相当します。 baðmiは男性名詞 baðmr「木」「女性の胸」の与格単数でundir baðmi で「木の下に」となります。heiðvönumは男性名詞heiðr「名誉」と形容詞 vanr「求めること」との複合語です。与格男性単数でbaðmiに一致します。

á sér hon ausask / aurgum forsi

áは女性名詞 á「川」の対格単数です。短い単語で前置詞áや否定の接辞áと同音異義語なので注意が必要です。sérは動詞 sjá「見る」の三人称単数現在でhon sér áで「彼女は川を見ている」となります。

ausaskは動詞 ausa「注ぐ」の過去分詞の対格女性単数ausaに接尾辞 -sk「〜のような」の複合語でáに一致します。「川が流れている様子」を意味しています。

動詞 ausaは注ぐものに与格を取りここではforsiが男性名詞fors「滝」の与格単数でこれにあたります。aurgumは形容詞 aurigr「泥のような」の与格男性単数でforsiに一致します。訳しにくいですがá ausask aurgum forsiは「泥のような滝が流れているような川」、もう少し自然な日本語にして「泥水が滝のように流れる川」となります。

af veði Valföðrs. / Vituð ér enn eða hvat?

afは英語のofと同じ由来で出自を表す前置詞で与格をとります。veðiは中性名詞 veð「誓い」「担保」の与格単数で Valföðrsは固有名詞 Valfǫðr ヴァルファズルの属格です。この名前はオーディンの別名で、valr「殺害」と fǫðr「父」の複合語で「戦死者の父」という意味です。オーディンは力のある戦士が死ぬとラグナロクに備えるためにヴァルハラに招いたと言われています。「ヴァルファズルの担保」とはある特別な泉の別名です。

Vituð ér enn eða hvat? という言い回しはこの後スタンザの最後に頻繁に登場します。vituðは動詞 vita「知っている」の二人称複数現在、érは二人称複数の代名詞の主格、ennは古い形ですが指示代名詞や副詞のようです。hvatは疑問代名詞で英語のwhatと同じ由来です。この文章を英訳すると Do you know it or what ? 「お前たちはそれを知っているか、それともそれ以外の何かか?」となりますが単に聞き手にかるい相槌を求めるフレーズだと思われます。

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