ギリシア語の前置詞のまとめ

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ギリシア語の前置詞はそれに続く単語の格を指定します。これは格支配といい、前置詞ごとに決まっています。前置詞によっては支配する格は一つに決まっていないものもあり、それによって意味が変わるものもあります。

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ヨハネによる福音書の出だし ἐνやπρὸςは前置詞

(By Immanuel GielOwn work, Public Domain, Link)

前置詞は元々は副詞だったと考えられています。副詞に詳細な説明を加えるために格変化した語句が続き、結果として前置詞+格支配を受けた語句の形になりました。このため幾つかの前置詞は単体で副詞として使われるものもあります。また接頭辞として動詞の最初に置かれるものと同じ由来と考えられます。

ἀντί

属格支配で「〜の場所に」「〜に対面して」「〜に反対して」の意味を持ちます。日本語でも「アンチ」という言葉で浸透しているとおりです。

ἀπό

属格支配で「〜離れて」の意味を持ちます。

ἐκ, ἐξ

次に続く語句が子音の場合はἐκで母音の場合はἐξになります。属格支配で「〜から外へ」「〜の結果として」の意味を持ちます。

πρό

属格支配で「〜の前(時間、場所どちらの意味でも)に」「〜に賛成して」の意味を持ちます。

ἀνά

「登って」という意味を持ちκατά「下って」と対称になります。対格支配で「〜を通して」の意味を持ちます。

εἰς

対格支配で「〜へ」「〜に向かって」「〜の中へ」の意味を持ちます。一般的に動作を伴う場合に使われます。ラテン語のin + 対格に相当します。

ἐν

与格支配で「〜で」「〜の中で」「〜の上で」の意味を持ちラテン語のin + 奪格に相当します。

σύν, ξύν

与格支配で「〜とともに」の意味を持ちます。英単語でsyn-やsym-で始まる単語シンフォニー、シンポジウム、シンセサイザーなどはこの単語が接頭辞に使われているものです。

διά

元々は「分配して」の意味を持ちます。属格支配の場合には「〜を通じて」「〜によって」「〜の間」「〜の手段で」の意味になり、対格支配の場合には「〜の理由で」「〜のおかげで」の意味になります。

κατά

元々は「下って」の意味でἀνάと対語になっています。属格支配の場合は「〜の下で」「〜に対して」の意味を持ち、対格支配の場合には「〜に沿って下へ向かって」「〜によって」「〜を考慮して」の意味になります。

ὑπέρ

属格支配の場合は「〜の上で」、対格支配の場合には「〜の上に」「〜の向こうに」の意味になります。ローマ字転写でhyper-となり日本語でも「ハイパー」とカタカナになっています。

ἀμφί

元々「両側で」の意味です。対格支配の場合「〜のあたりで」「〜の周りで」の意味になります。属格支配、与格支配でも使われますが頻度は低いです。

ἐπί

元々「上で」の意味です。属格支配の場合「〜の上で」の意味で動きを伴わない使われ方をします。対格支配の場合は「〜の上へ」「〜に向かって」と動きを伴います。

与格支配の場合は「〜のそばで」「〜を主題として」の意味を持ちます。

μετά

元々は「中で」「交換して」の意味を持ちます。属格支配のときには「〜とともに」、対格支配のときには「〜の後で」、レアですが与格支配のときには「〜の間で」の意味を持ちます。

παρά

属格支配の場合には「〜のそばから」、対格支配の場合は「〜の家へ」「〜のそばへ」、与格の場合は「〜のそばで」の意味を持ちます。「どこから?」と聞かれた場合は属格支配で、「どこへ?」と聞かれた場合は対格支配で、「どこで?」と聞かれたら与格支配で答えることになります。

περί

元々は「周りに」の意味をもちます。属格支配の場合には「〜を主題として」、対格支配の場合には「〜の周りで」の意味を持ちます。与格支配もレアですが「〜の周りで」という意味で存在します。

πρός

元々「接触して」の意味を持ちます。属格支配の場合「〜の側から」「〜の名において」、対格支配の場合「〜へ」「〜まで」、与格の場合「〜の側で」の意味になります。

ὑπό

元々「下で」「隠れて」の意味があります。属格支配の場合は「〜の影響下で」、対格支配の場合は「〜の下へ」、与格支配の場合は「〜の下で」の意味になります。「どこへ?」と聞かれた場合は対格支配で、「どこで?」と聞かれたら与格支配で答えることになります。

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