古代の画家アペレス(15)パンカスペ1

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アレクサンドロス大王と画家アペレスの間に起こった最も大きなイベントと言える出来事です。長い一文なので二つに分けます。

namque cum dilectam sibi e pallacis suis praecipue, nomine Pancaspen, nudam pingi ob admirationem formae ab Apelle iussisset eumque, dum paret, captum amore sensisset,

というのもアレクサンドロス大王が彼の側室で一番の愛人、名前をパンカスペといい、彼女の裸体を素晴らしい描写で描くことをアペレスに命じ、アペレスがそれに従う間に愛に捕らわれたことを感じ取った時、

namqueは接続詞「というのも」で前回からの話の流れを受けます。 cumは従属節をつくる接続詞で、この従属節の動詞が接続法の場合は「理由」を説明する節になります。iussissetもsensissetも三人称単数過去完了接続法で、主語は前の文の主語をそのまま引き継ぐのでアレクサンドロス大王になります。iussissetはjubeo「命令する」の変化、sensissetはsentio「感じ取る」の変化で、この二つを繋ぐのはeumqueの-que「そして」ですのでcum iussiset -que sensissetは「彼は命令し感じ取ったため」となります。

iussissetの説明です。「命令した」内容は不定句 nudam pingiで「裸体の女性が描かれること」です。nudamは形容詞の体格女性単数で、pingiは動詞 pingo「描く」の現在受動態不定法「描かれること」です。誰によって描かれるかはabと奪格で表されApelle アペレスであることがわかります。どのように描かれるかはobと対格で表されadmirationem「驚嘆すべきもの」さらに属格formae「形状の」で修飾されob admirationem formaeで「形状の驚嘆すべきものとして」と言われています。日本語だと難しく聞こえますがおそらく写実的以上の何かが求められているのでしょう。

Pancaspenは固有名詞の対格で女性名 Pancaspe パンカスペです。対格の接尾語がenとあまりみられない形なのはラテン語の対格ではなくギリシア語の対格の形のためです。nomine Pancaspenは直訳すると「名前においてのパンカスペ」つまり「パンカスペという名前の」という表現です。dilectamは形容詞dilectus「愛された」の対格女性単数で「愛人」と理解できます。与格 sibi  「彼自身にたいして」つまりアレクサンドロス大王の愛人だそうです。e は前置詞「〜から外へ」、pallacisは女性名詞 pallaca「妾」「側室」の奪格複数、suisも奪格女性複数で「彼の」、praecipueは副詞「特別に」でdilectam sibi e pallacis suis praecipueは「彼の側室から特別に選ばれた愛人」と読めます。

次にアレクサンドロス大王がsensisset「感じ取った」内容の説明です。こちらも不定句でeum captum「彼が捕らわれた」とあり奪格 amore「愛によって」、dum paret「彼が執り行っている間」とありアペレスがパンカスペの裸体を描く間に彼女に恋に落ちたこと、それをアレクサンドロス大王が感じ取ったことがわかります。

権力者の愛人に一介の画家が恋するとはかなり危険なことなのではないでしょうか。

長い一文ですがここまでが従属節「〜のとき」で主節は次にします。

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