巫女の予言(30)ヴァリュキュリャたち

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ヴァルキュリュル valkyrurはvalkyrja ヴァリュキュリャの複数形で死んだ戦士をオーディンの待つヴァルハラへと連れていく女性たちです。北欧神話でも有名な存在で日本ではドイツ語経由のワルキューレ、英語経由のヴァルキリーとして知られています。

テキスト

Sá hon valkyrjur / vítt um komnar

彼女はヴァリュキュリャたちを見た はるばるとやって来るのを

görvar at ríða / til Goðþjóðar:

いつでも駆って行くであろう 神々の元へと

Skuld hélt skildi, / en Skögul önnur,

スクルドは盾を持っている そしてその次はスコグル

Gunnr, Hildr, Göndul / ok Geirskögul;

戦いのグンとヒルド、魔力を使うゴンドゥル そして槍を使うゲイルスコグル

nú eru talðar / nönnur Herjans,

今彼女たちが数えられた ヘルヤンの処女たちが

görvar at ríða / grund valkyrjur.

いつでも駆って行くであろう 大地に対してヴァリュキュリャたちが

Poetic Edda – Völuspá 30

Walkyrien by Emil Doepler.jpg
By Emil Doepler – Doepler, Emil. ca. 1905. Walhall, die Götterwelt der Germanen. Martin Oldenbourg, Berlin. Photographed by Haukurth (talk · contribs) and (unfortunately heavily) cropped by Bloodofox (talk · contribs)., Public Domain, Link

解説

Sá hon valkyrjur / vítt um komnar

Sáは動詞 sjá「見る」の三人称単数過去でhon sáで「彼女は見た」「彼女は見ていた」となります。valkyrjurは対格複数でこの目的語になります。 komnarは動詞 koma「来る」の過去分詞対格女性複数で valkyrjurと一致します。この場合受動の意味ではなく「来た女性たちを」と解釈してよいでしょう。
víttは副詞で「遠くに」「広く」、umは動詞に完了の意味を与える接辞です。

görvar at ríða / til Goðþjóðar:

görvarは形容詞 görr「準備ができている」の対格女性複数でこれもvalkyrjurと一致しています。準備ができている内容はat+不定動詞で説明されます。これは英語のto+不定詞と同じです。ríðaは英語のrideと同じ由来で「馬に乗る」「馬で行く」の意味です。tilは属格を取る前置詞で「〜まで」、Goðþjóðarは中性名詞 goð「神」と女性名詞 þjóð 「人々」の複合語の属格で「神々」を意味します。

Skuld hélt skildi, / en Skögul önnur,

Skuldは女性名で第20スタンザにも女の巨人ノルンとして出て来ていましたがここでは別の存在だとされています。「負債」や「将来するべきこと」など未来に関する意味を持っています。

巫女の予言(20)ウルズ・ヴェルザンディ・スクルド

héltは動詞 halda「持っている」の三人称単数現在で英語のholdと同じ由来です。目的語は与格で撮りここでは男性名詞 skjöldr「盾」の与格単数 skildiになります。

enは接続詞で「そして」「しかし」、önnurは形容詞 annarr「他の」「その次の」の主格女性単数、Skögulは女性名で「女性」「揺らす人」などの意味があると言われています。

Gunnr, Hildr, Göndul / ok Geirskögul;

女性名が続きます Gunnrは「戦闘」、Hildrも「戦い」、Göndulは「魔力をふるう人」、Geirskögulは「槍を扱う女性」の意味です。

nú eru talðar / nönnur Herjans,

núは副詞「今」、eruはbe動詞に相当する動詞veraの三人称複数現在、talðarは動詞 telja「数える」の過去分詞主格女性単数で、eru talðarは「彼女たちは数え上げられた」の意味になります。nönnurは辞書になかったのですが英語の maidens「処女」やgoddess「女神」が当てられています。Herjansは Herjanの属格で「群衆の主」つまりオーディンを指しています。

görvar at ríða / grund valkyrjur.

görvar at ríðaはこのスタンザで二度目です。違いはgörvarが主格であることです。これはnönnurに一致するためで形は主格と対格で同じです。

grund は女性名詞 grund「地面」の与格単数でríðaの関節目的語です。

日本語に訳すときに複数形の扱いが難しいところです。彼女たちを複数形のまま「ヴァルキュリュル」というか単数形を使って「ヴァルキュリャたち」と言うかです。これは「アース神」が複数の場合æsir「エーシル」というか「アース神」と言うか、ノルンが複数の場合nornir「ノルニル」というか「ノルンたち」と言うかなど古ノルド語共通の問題です。

このあと『巫女の予言』は後半に入りラグナロクの話になります。一旦中断しますがのちに続きを書くようにします。

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