巫女の予言(9)妖精ドヴェルグの創造

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3人の巨人族の娘たちの出現によって神々は再度会議を開きます。神々のうち誰かがドヴェルグ dvergrという妖精の種族を創造することになります。ドヴェルグは一般に英語経由で日本語化されてドワーフdwarfと呼ばれています。

テキスト

Þá gengu regin öll / á rökstóla,

そして世界を治める力ある神々は 裁定の席へと赴いた

ginnheilug goð, / ok um þat gættusk;

そこで高貴な神々は 協議を行った

hverr skyldi dverga / dróttir skepja

誰がドヴェルグ族を 護衛の種族を創造するべきかを

ór brimi blóðgu / ok ór Bláins leggjum.

打ち寄せる血の波から 濃紺の巨人ユミルの系譜から

Poetic Edda – Völuspá 9

Listed Völuspá Dwarves by Frølich.jpg
Par Lorenz Frølich — Published in Gjellerup, Karl (1895). Den ældre Eddas Gudesange. Photographed from a 2001 reprint by bloodofox (discussion · contributions)., Domaine public, Lien

解説

Þá gengu regin öll / á rökstóla,

ginnheilug goð, / ok um þat gættusk;

神々が集まって協議をする様子を語るこの2行は第6スタンザの最初の2行とまったく同じです。この後にも同じ記述が第23スタンザと第25スタンザにも出てきます。本当はシリアスな場面なのですが同じ表現がなんどもでてくるとどことなくユーモラスにも思えます。

hverr skyldi dverga / dróttir skepja

hverrは疑問代名詞hverr「誰?」「何?」の男性主格単数を表します。男性や女性の場合は「誰」ですし、中性の場合は「何」の意味になりますがここでは主格なので「誰が」となります。skyldiは動詞skulu「〜することになっている」の三人称単数接続法過去です。まだ誰が行うか決まっていない非現実の動作なので接続法を取っています。またこのskuluは英語のshallに相当し動詞の原形によって補完されます。ここでは動詞skepja「形作る」がこれにあたり「誰が創造するべきか」という意味になります。ここでは前段の神々の協議内容にあたるので関節疑問文の形になります。

skepjaは目的語を取りますがここでは二つ並置されています。dvergaは男性名詞dvergr「妖精ドヴェルグ」の対格複数です。dróttirは女性名詞dróttの対格複数で一般には「王の兵隊」複数で「王の軍隊」を意味しますがここでは「神々の軍隊」と読み替えました。

ór brimi blóðgu / ok ór Bláins leggjum.

órは与格を取る前置詞でここでは創造のための材料を意味します。brimiは中性名詞brim「海岸や岩で砕ける波」の与格単数です。blóðguは形容詞blóðugr「血の」「血みどろの」の与格中性単数でbrimiに格性数で一致しています。巫女の予言では詳細に語られていませんが『スノッリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」ではオーディンとその兄弟が巨人ユミルの血から海を骨から山を作ったと言われています。

接続詞okを挟んで再度órが出てきます。Bláinsは固有名詞Bláinnの属格で巨人ユミルの別名とされています。古ノルド語にはblár「濃い」「青い」という英語のblueと同じ由来の形容詞がありこれに由来していると推測されています。leggjumは男性名詞 leggr「足」「血筋」の複数与格です。英語のlegと同じ由来ですがここではユミルの死体を再度利用していることから「ユミルの血統」と考えられます。

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