ギリシア語の動詞:εἰμίのまとめ1

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ギリシア語動詞のεἰμίの変化をまとめます。この動詞は英語のbe、フランス語のêtre、ドイツ語のsein、ラテン語のsumに相当する最重要動詞です。

不規則変化が多く、すべての変化の揃っていない欠格動詞です。受動態は存在せず、能動態か中動態のどちらか一種類が各時制で使われます。注意が必要な変化は赤字にしてあります。

直説法現在能動態

不規則に見えますが語幹ἐσ-と-μι動詞の組み合わせのような変化であることがわかります。

ギリシア語の動詞:変化形態のまとめ(1)

変化形 理論上の形
単数 一人称 εἰμί *ἐσ-μι
二人称 εἶ  *ἐσ-σι 
三人称 ἐστί(ν) *ἐσ-τι
双数 二人称 ἐστόν *ἐσ-τον
三人称 ἐστόν *ἐσ-τον
複数 一人称 ἐσμεν *ἐσ-μεν
二人称 ἐστέ *ἐσ-τε
三人称 εἰσι(ν) *ἐσ-ντι

変化時に起こる音韻変化に注意してください。

  1. -σ-は母音に挟まれると消失する。
  2. 母音の前の-τ-は-σ-に変化することがある。
  3. 歯音 dentalと呼ばれる子音、δ、τ、θ、λ、ν、σの前にある-σ-は消失する。
  4. σの前にある-ν-は消失する、そのときその前にある母音が引き伸ばされる。

例えば三人称複数の変化は理論上の形と大きく違いますが、理論上の形 *ἐσ-ντιに上記ルール2とルール3が適用され*ἐνσιとなり、ルール4が適用されεἰσιと変化したと考えることができます。

直説法未完了能動態

直説法の第二時制独特の接頭辞ε-がἐσ-に付き、語幹はἠσ-となっていると想定できます。

変化形 理論上の形
単数 一人称 ἦ / ἦν *ἠσ-ν
二人称 ἦσθα *ἠσ-ς
三人称 ἦν *ἠσ-τ
双数 二人称 ἤστην *ἠσ-την
三人称 ἤστην *ἠσ-την
複数 一人称 ἦμεν *ἠσ-μεν
二人称 ἦτε / ἦστέ *ἠσ-τε
三人称 ἦσαν *ἠσ-σαν

二人称単数で-θαが付いていますがこれは古い変化に従っています。οἶδα「知っている」の直説法二人称単数能動態の完了は οἶσθα、過去完了はᾔδησθαとなって同じ-θαを持っています。

直説法未来中動態

未来は能動態はなく中動態のみです。未来を示す接中辞-σ-と語幹母音εかοが間に入ります。

変化形 理論上の形
単数 一人称 ἔσομαι *ἐσ-σ-ο-μαι
二人称 ἔσει / ἔσῃ *ἐσ-σ-ε-σαι
三人称 ἔσται *ἐσ-σ-ε-ται
双数 二人称 ἔσεσθον *ἐσ-σ-ε-σθον
三人称 ἔσεσθον *ἐσ-σ-ε-σθον
複数 一人称 ἐσόμεθα *ἐσ-σ-ο-μεθα
二人称 ἔσεσθε *ἐσ-σ-ε-σθε
三人称 ἔσονται *ἐσ-σ-ο-νται

三人称単数ἔσται は語幹母音の-ε-が抜けていますが、現在形ἐστίの影響を受けていると考えられます。このように理論上の形ではなく外のよく使われる変化形の影響を受けて結果的に不規則形になる変化を類推 analogieといいます。

接続法現在能動態

直説法は-μι動詞でしたが接続法では-ω動詞になります。語幹母音のεとοは接続法ではそれぞれηとωになります。

変化形 理論上の形
単数 一人称 *ἐσ-ω
二人称 ᾖς  *ἐσ-η-εις  
三人称 *ἐσ-η-ει
双数 二人称 ἦτον *ἐσ-η-τον
三人称 ἦτον *ἐσ-η-τον
複数 一人称 ὤμεν *ἐσ-ω-μεν
二人称 ἦτε *ἐσ-η-τε
三人称 ὦσι(ν) *ἐσ-ω-ντι

語幹ἐσ-の部分は音韻変化によって完全に消失しています。

命令法

現在能動態のみ存在します。

変化形 理論上の形
単数 二人称 ἴσθι *ἐσ-θι
三人称 ἔστω *ἐσ-τω
双数 二人称 ἔστον *ἐσ-τον
三人称 ἔστων *ἐσ-των
複数 二人称 ἔστε *ἐσ-τε
三人称 ἔστων *ἐσ-ντων

二人称単数は語幹が変わっています。三人称複数は-ν-が脱落しています。頻度は少ないですがἔστωσανや、アッティカ方言でὄντωνという形が見られます。

続きます。

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