ギリシア語の名詞変化:第三変化形(5)

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第三変化形のうち子音で終わるものを見てきました。ここでは-ηςで終わる男性固有名詞と-οςで終わる中性名詞と-αςで終わる中性名詞の一部の変化を見ます。

A-3 摩擦音 -sで終わるもの

語幹末尾のsが消失して縮約するケースがあります。[ ]の中は縮約する前の形です。

-ης
ソクラテス
-ος
城壁
-ας
ὁ Σωκράτης τὸ τεῖχος τὸ κρέας
Σώκρατες τεῖχος κρέας
τὸν Σωκράτη(ν) τὸν τεῖχος τὸν κρέας
τοῦ Σωκράτους [-εσος] τοῦ τείχους [-εσος] τοῦ κρέως [-ασος]
τῷ Σωκράτει τῷ τείχει [-εσι] τῷ κρέ [-ᾱσι]
主・対・呼 τὼ Σωκράτα τὼ τείχει [-εε] τὼ κρέα [-αε]
属・与 τοῖν Σωκράταιν τοῖν τεικοῖν [-έοιν] τοῖν κρεῷν [-άοιν]
οἱ Σωκράται τὰ τείχη [-εσα] τὰ κρέα [-αε]
Σωκράται τείχη κρέα
τοὺς Σωκράτας τὰ τείχη τὰ κρέα
τῶν Σωκρατῶν τῶν τειχῶν [-έων] τῶν κρεῶν [-άων]
τοῖς Σωκράταις τοῖς τείχεσι [-εσσι] τοῖς κρέασι [-εσσι]

縮約について

それぞれの本当の語幹はΣώκρατες, *τειχες, *κρεϝαςです。*はその単語が理論上のもので実際の変化系には存在しないことを表しています。

  • 主格複数 *τειχες + α → τείχεα → τείχη
  • 属格単数 *Σωκρατες + ος → Σωκράτεσος → Σωκράτους
  • 属格単数 *κρεϝας + ος → κρέαος → κρέως

ρの後の縮約は一般にηになります。

  • 主格単数 τὸ μέρος → 主格複数 τὰ μέρη

同じ語幹から作られる名詞と形容詞はそれぞれ-ο-と-η-を含むことで見分けることができます。

男性固有名詞について

だいたいのものは-της, -λης, -νηςで終わるものです。対格単数は-ηνで終わることもありますがこれは第一変化形の男性名詞の影響を受けているものと思われます。

-κλῆςで終わるものは-κλέηςが縮約したものです。このためΠερικλῆςを例にとると以下のようになります。

  • 呼格単数 Περίκλεις [-εϝες]
  • 対格単数 Περικλέᾱ [-έεα]
  • 属格単数 Περικλέους [-εϝεσος]
  • 与格単数 Περικλεῖ [-έει]

-αςで終わる他の中性名詞

κρέαςの他にこの変化をするものはそれほど多くありません。

  • γῆρας 老年
  • γέρας 報償
  • κέρας 角

ただしこのκέραςは縮約しない変化も存在します。

  • 属格単数 κέρατος
  • 与格単数 κέρατι
  • 主格対格複数 κέρατα
  • 属格複数 κεράτων
  • 与格複数κέρασι

-ωςで終わる名詞

-ωςはこの分類からはみ出してしまいます

  • ἡ αἰδώς 恥、礼儀
  • ἡ ἠώς 曙
  • ἥρως 英雄
  • ὁ ιδρώς, -ῶτος 甘み、ジュース
  • ὁ γέλως, -ωτος 笑い

だいたい以下のような変化をしますが不規則変化に分類されるものもあります。

αἰδώς
αἰδώς
αἰδῶ [-όα]
αἰδοῦς [-όος]
αἰδοῖ
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