ギリシア語の格について

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以前ラテン語を中心にして格の説明をしました。

文法の格

今回はギリシア語の格に焦点を当てます。

ギリシア語の格は主格、呼格、対格、属格、与格の5つです。ラテン語にある奪格はありません。奪格で表現されるような「〜から」「〜において」のような表現はギリシア語では属格や与格で表現されます。

格の説明

主格 nominative

英語のnominativeは「命名に関する」という意味で「賞にノミネートされる」というときのノミネートの形容詞の形です。ラテン語のnomino「私は名付ける」の過去受動分詞nominatus「名付けられたもの」に由来しています。

主格はその名前の通り主語につかわれるときの格です。

その花は赤い。

というときの「赤い」も主格になります。なぜなら「赤い」ものと「花」は同じものを指しているからです。

当たり前のようなことですが文章が複雑になってくるどの形容詞がどの名詞を修飾しているのかわからなくなる時があります。そのとき形容詞がどの単語を修飾しているのかは格を目印にして判断できます。

呼格 vocative

英語のvocativeは「呼びかけに関するもの」という意味でこれもラテン語のvoco「私は呼ぶ」に由来しています。ボーカルもこの仲間の言葉になります。

ギリシア語の呼格は主格と同じものが多いですが、単数においては語尾が短くなっているものもあります。例えばソクラテスの主格はΣωκράτης ソークラテースですが呼格になるとΣωκράτες ソークラテスと最後の長母音が短母音になります。

また普通は呼びかけにὦを前において

ὦ Σωκράτες

となることが多いです。冠詞ではないのですが一緒に覚えておいても良いでしょう。このὦは日本語でいうと「おお!」とか「ねえ!」といった感じのものです。

対格 accusative

英語でaccuseというと「告発する」という強い意味になりますがもともとは「理由、原因を求める」という言葉から来ています。

対格は文の目的語に使われます。日本語の「〜を」に相当します。他に時間や場所の広がりを意味する表現にも使われます。ὅλην ἡμέρανは「1日のすべて」の対格ですが文中にでてくると「1日中」という副詞のような使われ方になります。

属格 genitive

英語でgeneというと「遺伝子」のことですが属格は由来や所有を表します。名詞の補語になり日本語の「〜の」にあたります。本来奪格で表現されていた場所や日付の表現「〜において」や比較級の比較対象にも使われます。比較対象は英語でいうthanの後に続く言葉のことで「〜より」という使われ方をされます。またラテン語でいう絶対奪格に相当する絶対属格という表現もありますがこれはまた別の機会に説明したほうがよさそうです。

与格 dative

間接目的語に使われる格で帰属や動作の方向を表します。少し前に記事を書いていますのでそちらを見てください。

補足

格の間の相関

  • 呼格の双数と複数は常に主格と同じです。
  • ラテン語と同じく中性は主格と呼格と対格が常に同じです。
  • 中性複数の主格はほとんどが-αで終わります。(呼格と対格も同じ)

その他の格

現在副詞になっているものの中には奪格「〜から」や具格「〜の手段を用いて」や処格「〜の場所において」に由来するものがあります。

  • -θεν で終わるものは奪格
  • -ω または -ως  で終わるものは具格
  • -ι または-σι で終わるものは処格
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