古代の画家アペレス(8)プロトゲネスその3

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ロードス島の画家プロトゲネスを尋ねたアペレスは不在中の名乗る代わりに線を一つ描いて立ち去りました。プロトゲネスがやがて戻って老婆に留守中のことを聞きました。

ferunt artificem protinus contemplatum subtilitatem dixisse Apellen venisse, non cadere in alium tam absolutum opus;

ここで起こったことは以下のように伝えられている。芸術家はその正確な線をじっと見つめてから言った、アペレスが来たことを、このような完璧な労作は他の誰にもなし得ないことを。

feruntは動詞 fero「運ぶ」の三人称複数現在ですがここでは主語のない非人称で「人々は伝えている」、受動態のように訳すと「伝えられている」という意味になります。その内容は不定句で主語は対格、動詞は不定法でここではartificem dixisse「芸術家は言った」となります。dixisseは不定法完了能動態で「言ったこと」の意味です。

protinusは副詞「前進して」です。contemplatumはデポーネント動詞 contemplorの完了能動分詞の対格男性単数で「凝視した」でartificemを修飾しています。subtilitatemは形容詞 subtilitas「正確な」の対格女性単数で前の文章に出て来た女性名詞 lineaの言い換えになります。protinus contemplatum subtilitatemで「彼は正確な線を凝視してから」と読めます。

dixisse の補語はまた不定句になります。不定句の中に二つの不定句があります。Apellen venisse「アペレスが来たこと」とnon cadere opus「作品は作られない」の二つです。後者にはさらに補語がありin alium「他の誰かの中で」はcadereに掛かり、tam absolutum「このような完全な」はopusに掛かります。

ipsumque alio colore tenuiorem lineam in ipsa illa duxisse abeuntemque praecepisse, si redisset ille, ostenderet adiceretque hunc esse quem quaereret.

プロトゲネス自身は別な色を使いさらに細い線を同じ絵の板の上に描き、立ち去りながら、もし彼アペレスが再び訪れたらこれを見せてこう伝えるように言付けた、「君の訪問先はこれだ」と。

-queは接続詞「そして」です。前の行の続きでferuntの補語となる不定句が二つ続きます。一つ目はipsum duxisse「彼自身は導いた」、二つ目はabeuntem praecepisse「出かける彼は言付けた」です。

最初の不定句の補語はまず奪格男性単数のalio colore「他の色をもって」、対格女性単数 tenuiorem lineam「さらに細い線を」、in ipsa illa「同じそれの中に」です。tenuioremはtenuisの比較級です。ipsa illaは女性単数でおそらく前に出て来た女性名詞の単数 tabula「絵の板」のことでしょう。つまりアペレスが書いた絵の板の上にさらに別の線を引いたことになります。

abeuntemは動詞 abeo「立ち去る」の現在能動分詞の対格男性単数でartificemつまりプロトゲネスの言い換えになります。praecepisseは動詞 praecipio「前以て取る」の不定法完了能動態です。

si以下がその言付けた内容です。si redisset ille「もし彼が戻って来たら」、仮定の話なので接続法過去完了が使われています。ostenderet は「見せる」、adiceretは「投げる」で両方とも接続法半過去で主語は省略されていますが留守番の老婆でしょう。投げるのは言葉でhunc esse quem quaereret「彼アペレスの探している人物はこれだ」ということです。

アペレスが老婆に誰なのか尋ねられた時には線を一つ描き ab hoc「これによって(訪問は行われた)」と答え、プロトゲネスは別な線を一つ描き hunc esse「(君の訪問している相手は)これだ」と答えています。hocもhuncも同じhicの変化です。線と「これ」で語り合えるのですから二人の絵の技術と鑑識眼は相当なものであったのでしょう。

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