古代の画家アペレス(4)絵から手を引き離すこと

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プリニウスはカリス以外の秀でている点も説明しています。アペレスが語ったとされることをここで引用しています。

et aliam gloriam usurpavit, cum Protogenis opus inmensi laboris ac curae supra modum anxiae miraretur;

彼はまた他の栄光も掴み取った、アペレスがプロトゲネスの途方もない労苦と度を越した配慮の作品を賞賛したときに

aliam gloriamは対格女性単数で「他の栄光」、usurpavitは動詞 usurpo「掴み取る」「適用させる」の完了です。

cum以下は従属節でこの場合は「〜の時に」という意味になります。protogenisは同時代の画家 Protogenes プロトゲネスの属格、immensi laborisも属格の男性単数で「途方もない労苦の」、acは接続詞「そして」、curaeも属格でcurae supra modum anxiaeは「度を超えた配慮の」という意味です。

mirareturはmiror「驚く」「賞賛する」の半過去接続法です。デポーネント動詞なので変化系は受動態ですが意味は能動態で、主語はアペレスで、目的語はopus「作品」です。

dixit enim omnia sibi cum illo paria esse aut illi meliora, sed uno se praestare, quod manum de tabula sciret tollere, memorabili praecepto nocere saepe nimiam diligentiam.

実際にアペレスは言った、すべての自分の持つ素養や技術は彼プロトゲネスと匹敵するかむしろ彼のほうが優れていることを、しかしある一つのものにおいては自分のほうが秀でていることを、それは完成を見極め絵から手を引き離すことで、余計な勤勉さがしばしば作品に害を与えることを肝に命じていたことによっていた。

dixitは動詞 dico「言う」の三人称単数完了「彼は言った」、enimは接続詞で「実際のところ」「例えば」の意味で文頭から常に二番目に来ます。 彼の言ったことは不定構文、対格と動詞の不定法の組み合わせです。

一つ目はomnia paria esse 「すべての匹敵するものが存在すること」あるいは「すべてが匹敵すること」、sibiは与格で「自分(アペレス)に対し」でアペレスの所有を表します。cum illoは「彼(プロトゲネス)と比べて」でparia「匹敵している」を補完します。aut melioraで「またはそれ以上」、その前のpariaと並置されています。illiも所有の与格でプロトゲネスがそれ以上の才能を持っていることを表しています。

二つ目はse praestare「彼自身が秀でていること」です。unoは奪格で「ある一つのことにおいて」の意味になりそのことはquod以下の関係節で説明されています。manum de tabula tollereは不定句で「絵から手を上げること」つまり「完成を見極めてそれ以上手を入れないこと」を意味しています。sciretは動詞 scio「知っている」「技術がある」の三人称単数半過去です。

memorabili以下は絶対奪格です。memorabili praeceptoで「覚えられるべきことが守られること」を意味します。で、何を覚える必要があるのかと言うと不定構文 nocere nimiam diligentiam「余計な勤勉さは害を与えること」になります。saepeは副詞「しばしば」です。害を与える目的語は省略されていますが一般的な「作品」と考えてよいでしょう。

言われてみるとなるほどと思いますが「完成を見極めたやめどき」は重要なポイントです。これは何も絵画に限ったことではないでしょう。

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